2022年9月26日
本日更新する日記はニュウナイスズメの観察記。
私の住む秋田県では稲の生育が進む出穂期になると水田に群れるニュウナイスズメを目にするようになります。
稲穂の成長と共に数を増やすニュウナイスズメはそのほとんどが秋田県以北の地域で繁殖した個体群。
本県においての繁殖は局所的であり繁殖個体を観察できる機会は多くありません。
そのため観察の機会が増えるのは渡りの個体が見られるようになる出穂期~登熟期までの期間。
この期間を総じて生殖成長期と言いますがニュウナイスズメは稲穂の成長を見計らうように数を増やすため、私もそのタイミングに合わせて観察を行いました。
1回目の観察は先月18日。
例年群れが見られる地域へ足を運ぶと否応なしに目に飛び込んでくるニュウナイスズメたち。
水田は勿論のこと周辺の立木・藪・電線など、ありとあらゆる場所に止まっている姿が見られました。
この時は舗装道路へ降りている群れの姿も。
一体何の為に舗装道路へ降りていたのか...
こうした行動を目にした際、自分なりに想像を膨らませますがしっくりとくる答えを導き出すことは出来ませんでした。
ニュウナイスズメの群れはざっと見渡してみても1000羽を超えていたように思います。
風景の一つとして見る群れの姿は壮観と思える一方、観察という面においては難しいと感じる場面。
群れの規模が大きくなればなるほど近付くことを許してもらえません。
警戒心の強い個体が飛び立つことで他の個体も釣られるように飛んでしまうことから生態に迫る観察をするには根気が必要でした。
暫く群れの行動を見ることである程度のパターンが分かってきます。
後は行動を先読みして待機するだけですが...
世の中そんなに甘くない。
想定では群れごと止まるはずでしたが、警戒されてしまったのか止まったのはたったの1羽。
先に掲載したのは雌になりますが次に掲載するのは雄。
こちらは群れのほとんどが飛び去ったにも関わらず1羽だけ黙々と採餌を続けていた個体です。
鳥にも個性があり人間で例えると食いしん坊なタイプでしょうか。
次に掲載するのは今年生まれの幼鳥。
どことなくあどけなさが残ります。
一般車や農家さんの往来により田んぼへ降りては待避を繰り返すニュウナイスズメの群れでしたが、一部の群れが農道脇の空き地へ降りる様子が見られました。
草の種子でも食べているのかと思い双眼鏡で確認してみると採餌をしているようには見えません。
そこで少し距離を縮め改めて確認してみたところ地面に踞るような姿が見られました。
更に接近を試みて確認してみると群れが一斉に砂浴びをしていることが判明。
体を回転させるようにして穴を掘っての砂浴び。
そのため砂浴びに夢中になっている個体は顔だけ見える状態です。
なかには場所を巡って言い争っているような光景も。
これまでに水の残った田んぼの縁で水浴びをする個体を見たことはありましたが、この様にして砂浴びをする姿を見たのは初めての経験でした。
考えてみるとスズメも砂浴びをすることから特に珍しい場面ではないと思います。
しかし私にとっては初めて見る場面。
良い場面に出会したと嬉しさを感じる一方で過去の観察が甘いと思わされた一幕でした。
この日の観察は砂浴びを見て終わりましたが、次に観察を行ったのは稲穂の生育が更に進んだ今月18日。
1回目の観察からちょうど1ヶ月が経過し間もなく稲刈りの時期を迎える頃。
個体数の増減、行動に変化が見られるものかと田んぼに様子を見に行ってみると...
電線を占拠する群れの姿が見られました。
広範囲に分散していた群れは1ヶ所に集まっており総数としては前回と変わらない様子。
定期的に田んぼに降りては電線に戻ってを繰り返し一斉に飛ぶ姿は圧巻です。
電線に止まっている際は接近も容易。
しかしながら採餌の時に限っては近付くことを許してもらえません。
他の鳥類にも言えることですが、人間に対しての警戒範囲は高さによって異なるように思います。
警戒となる対象が見下ろす位置に居ると安心できるのでしょう。
そのため採餌の様子を間近で観察するには粘り強く飛来を待つ必要があり求められるのは根気。
時間を掛けて様子を見ていると思わぬ副産物を得られるケースも多く、のんびりと待ってみようと思いましたが...
この日の2日後には台風14号の通過が予想されており、倒伏被害が出る前にと農家さんは慌ただしく稲刈りをしていました。
農道をひっきりなしに軽トラが走りニュウナイスズメも落ち着きがありません。
この様な状況において農道へ長時間停車している訳にもいかず今回は観察を断念。
農家さんあっての野鳥観察ですから充分な配慮が必要です。
この恩恵を長く受ける為には農作業の邪魔にならないことが最低限守るべきマナーでしょう。
今回の台風は幸いにもほとんど影響がなく、県内での倒伏被害もほぼ確認されておりませんでした。
ニュウナイスズメたちが食べていた新米は間もなく私たちの食卓へ並びます。
秋田県のお米と言えば『あきたこまち』が全国的にも有名。
今秋から新しい秋田のブランド米として『サキホコレ』が本格デビューしますが、プレデビューとなった昨季はなかなか手に入らない米として報道されていました。
地元民が口に出来なかった一方、首都圏では値崩れを起こしたそうです。
その原因はPR不足にあったのだとか。
観光についても然り、宣伝が下手な秋田県。
秋田米の最上位品種としてデビューしますが、まだまだ知名度が低いため勝手に宣伝したくなってしまいます。
農家さんに対して日頃のお礼と言うと口幅ったいようですが、私にできることはこれくらいしかありませんので...
今年の新米は秋田のお米を是非どうぞ。
本日の観察日記はこれにておしまい。