2023年11月6日
本日更新する日記は先月9日の観察分から。
疲労の蓄積により体が重く感じたこの休日。
空を見上げるとマガンやコハクチョウの群れが飛んでおり季節の歩みを感じる朝でした。
渡りの時期を迎え場所によっては珍鳥との出会いに恵まれることもあることでしょう。
未だ見ぬ鳥を探したいという気持ちとは裏腹に、鉛のように重たい体を動かす気力が湧かず神経を尖らせての探鳥は普段の業務に支障が出るのは明らか...
こうした事情からこの日も自宅近くの農耕地で簡素に観察を楽しむことに決めました。
お目当ては勿論タシギ。
簡素ながらも“探鳥”の醍醐味を味わうことができるジシギの観察は飽きることがありません。
この日は晴れのち曇りの予報が出ていたこともあり、晴れているうちに目星を付け雲ってから本格的な観察をと考え探鳥を始めました。
広い農耕地を巡回すると前週に見た状況と酷似しており、同じ個体が同じ場所に居るのではと思うほど。
始めに見たのはこちらの個体。
逆光の条件で見るこの個体は前週もほぼ同じ場所での確認でした。
次に見られたのは農道脇で見られた個体。
こちらも前週ほぼ同じ場所で確認しています。
順光で観察できる個体が見られたらと広範囲に捜索していたところ、10羽ほどのタシギが群れる田んぼを発見。
こちらの個体は腹を着けて休憩中。
奥まった場所では複数の個体が見られたものの二番穂が伸びてしまったためはっきりとその姿を見ることはできません。
この様に二番穂が伸びるることで全体を見渡すことが出来なくなり観察をするには厳しい状況となってしまいました。
じわじわと車を動かし穂と穂の間を見て回る探鳥は手間と労力を要します。
こちらの個体は私を警戒して膠着状態。
そしてこちらの個体は穂の隙間から私の動きを伺っているように思えました。
観察に適した個体が見つからずやきもきしていたところ、この個体は比較的近い距離で伸びの姿を見せ...
続け様に両翼を上方に動かし真っ白な翼下面を見ることができました。
白さが際立つこちらの個体は間もなく採餌を始めたものの、二番穂の陰となり想定通りの観察ができません。
稲刈り直後の田んぼがほぼ無くなり、条件良く観察する為には農道脇に居る個体を探すほかありませんでした。
再び広範囲に捜索を始めると上空をマガンの群れが通過。
こちらは宮城県で越冬する個体群。
この時3羽のツバメが飛んでおり当初は気に止めることなくタシギを探していましたが、飛翔する姿に違和感を覚え双眼鏡で確認したところコシアカツバメであることが判明。
夏場にこの地域で見ることはないため渡りの個体であることは確かです。
まだまだ期待の曇り空にはならず手持ち無沙汰にコシアカツバメの飛翔シーンを撮影していたところ『チィー』という鳴き声と共に正体不明の鳥が飛び立ちました。
金属質に聞こえる鳴き声を耳にして脳裏に浮かんだのはムネアカタヒバリ。
数年前も同時期にムネアカタヒバリを目撃していましたが残念ながら当時は証拠写真すら残せずにいました。
しかしこの時は飛び立つ姿を目撃しただけでありムネアカタヒバリと断定することはできません。
そこで当該個体が戻って来ることを期待して暫く待ってみたところ、飛び立ったと思われる小鳥が付近へ飛来。
しかし正体不明の鳥が降りた場所は田んぼの際。
農道に伸びた草の陰へ入ってしまったため姿を見ることができず...
開けた場所へ出てくることを期待しましたが一向に姿が見られず、角度を変えようと思い車を動かした途端『チィー』という声を発し再び飛んでしまいました。
草陰を伝うようにしていつの間にかこちら側へ接近していたようです。
幸いにも降りた地点を確認できたことからそちらへ移動すると二番穂と二番穂の隙間から見え隠れする正体不明の鳥を発見。
距離も離れていたため正面から確認しようと思いましたが、あと少しといったところでまたしても飛んでしまいました。
警戒心が強過ぎお手上げ状態。
証拠写真すら撮らせてもらえない状況に諦めの気持ちさえ出始めたところ、同じ鳴き声を発する小鳥が複数羽飛来。
このチャンスを活かさなければ正体を明かすことが出来ないかもしれません。
同じ失敗を繰り返さぬよう辛抱強くその場に留まり、姿を確認できるまで待つことに。
粘り強く待ち撮影できた画像がこちら。
農道と農道の中間に位置していたため視力には自信のある私でも辛うじて見える程度です。
正体不明の鳥は早足で動き回り、まるでネズミが動いているかのようでした。
双眼鏡を覗いても穂と穂の間を一瞬で駆け抜けるため種の同定には至りません。
そこで撮影した画像を拡大し検証を行うと飛来した全ての個体がムネアカタヒバリであると判明。
以前の例からも本県では稲刈りが終わった頃に通過していることが裏付けられた瞬間。
後日談になりますが、この日の翌日(10月10日)知人も別の地域でムネアカタヒバリを確認しており、本県を多数の個体が通過または立ち寄っていたようです。
ムネアカタヒバリは二番穂の根元を啄むような姿も見られ、身を隠しながら採餌をしてるようにも思えました。
この時確認できたムネアカタヒバリは6羽ほどでしたが、タヒバリですら珍しい部類に入る本県ではこの様に観察できる機会は多くありません。
地元で冬羽の個体を観察できたのも初めてとあってより良い条件を求めましたが、とんだ邪魔者が...
田んぼへチョウゲンボウが急降下してきたことでムネアカタヒバリは一斉に飛去。
更に田んぼに潜んでいたタシギも全て飛んでしまいました。
観察は振り出しに戻され途方に暮れましたが、仮に見つけることができたとしてもチョウゲンボウの出現により警戒心は更に増していることでしょう。
しかし『諦めたらそこで試合は終了ですよ』という名言を思い出し再び捜索にあたりました。
農道をゆっくり進むと『チィー』という鳴き声を発し草陰からムネアカタヒバリと思われる小鳥が飛び立ちます。
この地域の田んぼには点在する形で多数のムネアカタヒバリが入っていたのかもしれません。
比較的近い距離に居るムネアカタヒバリを発見し『これはチャンス!』と車を止めて双眼鏡を覗くとまさかのトウネン。
嘗てはこの地域でも多数のシギチが見られ手軽に観察を楽しめる良い場所でしたが、近年は枝豆畑への転作が進み休耕田も無くなった現在はトウネンを見るなど皆無の状態でした。
独りぼっちで少々気掛かりでしたが、無事に目的地へ辿り着いて欲しいものです。
気を取り直し捜索を続けた結果、比較的近い距離で発見したのはこちらの個体。
一見するとムネアカタヒバリのようにみえますが明瞭な白いアイリングが気になります。
行動としては先に観察していた個体と同様に早足で動き回り身を潜めながら採餌をしていました。
とは言えこれまでに観察した個体に比べると警戒心はやや緩いように感じ、車を動かしても飛び立つことはありません。
そこで抜けの良い場所で観察できればと考え進行方向へ先回り。
その結果、狙い通り畔の縁へ出てきた場面を捉えることができました。
こちらでも俊敏に動き回っていましたが、草の付け根から芋虫のような生き物を摘み上げる場面を目撃。
捕食後は再び穂と穂の合間を縫うように移動してしまったため、この日の観察はここまでとしましたが最後まで種の同定には至りませんでした。
この日の夜【ムネアカタヒバリの冬羽】をワードにネットで調べてみると、見事なまでに全ての記事で特徴が異なり自分では答えを見出だすことができず...
こうした事情から先輩の見解を頂こうと画像を見てもらったところ『結論からいうと、いただいた画像はムネアカタヒバリでしょう。赤みのある耳羽、背中の白線、初列が三列を越えていないところが合致しますね。あとは地鳴きもそうですね』という回答を頂きました。
どうやら私が引っ掛かっていた白いアイリングは識別点に含まれなかったようです。
改めて野鳥の同定は複合的に見なければならいなと思わされる一幕でした。
この日はタシギの観察から一転してムネアカタヒバリの観察となりましたが、今回の経験を基に来季からはムネアカタヒバリの渡りのルートに迫ってみたいと思います。
本日の観察日記はここまで。