2023年1月2日
改めまして新年明けましておめでとうございます。
本日更新する日記は今年最初の観察旅行記。
鳥見始めは冬季休暇を利用して常連のお客さんと共に九州縦断の観察旅行を計画しましたが...
計画を立てて間もなく、耳にしたのは鹿児島県のツル飛来地で発生した鳥インフルエンザの情報。
今季は鳥インフルエンザが猛威を奮い連日のようにツルが落鳥しているそうです。
当初の計画では鹿児島県のツル飛来地から始まり~佐賀県の東よか干潟~長崎県の諫早干拓地と九州を縦断する予定でしたが、観察地のはしごはウイルスを持ち運ぶ恐れがあり旅の計画を白紙に。
計画を練り直し考えついたのは真冬の道東の旅でした。
いつものように秋田空港から千歳空港を経由して中標津空港へ。
13時を過ぎた頃に中標津空港へ到着しましたが一歩外へ出ると肌を突き刺すような寒さ。
道東ということもあり雪こそ少ないもののこの時の気温は-9℃でした。
レンタカー調達後は空港周辺で少々待機。
お客さんは羽田からの直行便で一時間後の到着であった為、極寒に耐えられるよう身支度を整えお客さんを待ちました。
この間、Twitterで交流のある若手バードウォッチャーたちと初顔合わせ。
地元のバードウォッチャーと関東から遠征してきたお二方とお会いする機会がありましたが初めて見る私は想像以上にオジサンだったことでしょう。
間もなくお客さんが到着し始めに足を運んだのは中標津町の中心部に位置する公園。
お客さんにとって真冬の北海道は初めてということもあり翌日からの観察に備え、予行演習を兼ねて小鳥の観察をしてみることに。
最初に見ることができたのはシロハラゴジュウカラ。
北海道らしい鳥を観察できたらとテンポ良く探鳥を続けたいところでしたが、小鳥が想像以上に少なくハシブトガラを観察した頃には薄暗くなり初日の観察はあっという間に終了となりました。
2023年1月3日
日程2日目。
この日の観察は野付半島から。
まだ朝陽の眩しい時間帯に見られたのはエゾシカの群れ。
雄の2頭が鍔迫り合いのようにツノを合わせており雄大な景色の中で暫し観察。
北海道らしい光景を一体どの様に切り取るべきか。
単焦点のレンズが故に構図の作り方に四苦八苦。
縦構図でも撮影してみましたがイメージするような絵面になりません。
「ズームレンズを持ってくるべきだった」と独り呟いていると傍に居たはずのお客さんが見当たらず...
お客さんは既に車へ戻っており『寒さで指が動かない』と凍えたように震えていました。
この時の気温は-19℃と強い冷え込み。
寒さに強い私も顔面が痛いと感じるほどだった為、関東にお住まいのお客さんにとっては死ぬほど寒かったことでしょう。
この寒さによって見られたのが蜃気楼。
大気中の温度差によって光が屈折を起こし見られる現象です。
この時は海面温度と大気の温度差が極端であったため発生したのではないでしょうか。
蜃気楼が出るほど厳しい状態でしたが野付半島の先端にはユキホオジロが待っています。
今回の旅において一番の目的と云っても過言ではないユキホオジロに会うため、突き刺すような向かい風を受けながら半島の先端を目指し歩きました。
ゴール地点が見えてきた頃、地面を動く白い物体が。
直ぐにユキホオジロと分かり観察を始めましたが双眼鏡のピントを合わせるダイヤルが寒さで固まり思うように動きません。
正直なところここまで寒さの影響を受けるとは思いませんでした。
手袋を二重にしていても冷気が伝わってくるほどで指先が動かず...
ピントリングも上手く回せなければAFボタンも上手く押せず、撮影に関しては何となく行っている状態。
この日確認できたユキホオジロは40~50羽ほど。
群れで行動しているだけに近寄ることは難しく、追えば追うほど遠退いてしまいます。
そのため野付半島での観察はある程度距離を置いたところで待つ方が無難。
追ったところで飛ばれることは必至。
それを更に追い掛けても体力を消耗して終わることでしょう。
もしかすると地元人ならではの良い観察スタイルがあるのかもしれません。
しかし私のような余所者は待った方が吉。
飛翔シーンを狙っていると偶然にも面白い姿を撮ることができました。
ユキホオジロの観察の合間に見られたのはオオワシやオジロワシ。
ロケーションが抜群に良いため大きく写す必要がありません。
逆に大きく撮ってしまうと“もったいない”と感じます。
背後からはコクガンの群れが飛んでくる場面もありました。
更にはコオリガモの雄が先端部へ降りる姿を目撃したことからそちらへ移動してみると雌雄のビロードキンクロに遭遇。
比較的近い距離で見ることができ歓喜の瞬間でした。
上の画像が雄。
下の画像は雌。
こちらがコオリガモの雄。
野付半島での観察は収穫が多く、戻りの足取りは非常に軽いものでしたが一つ残念だったのはツメナガホオジロ。
残念ながら飛ばれてから気付き観察には至りませんでした。
その他に気になったのはコヒバリの声を耳にしたこと。
姿を確認できていないため正確な情報ではありませんが、聞き間違いでなければコヒバリも入っているようです。
車へ戻り野付半島を後にしようと思ったところ突然目の前に現れたのはハイイロチュウヒの雌。
撮影した時には既に遠退いてしまいましたが野付半島は何時何処に何が出るのか分からないため油断の隙もありません。
野付半島での観察を終えて次に足を運んだのは標津漁港。
漁港内に何か珍しいカモ類や海鳥が入っていないかチェックしてみましたが特に気になる種は見当たらず...
しかし関東在住のお客さんにとってシノリガモやホオジロガモを近い距離から観察できる機会は少ないだろうと考え暫し観察をしてもらいました。
意外だったのはヒメウやカモメ類がほとんど見られなかったこと。
時期的な問題なのでしょうか。
漁港を後にしようと思ったところでクロガモを発見。
次から次へと見てもらいたい鳥が出るのでなかなか先へ進めません。
漁港での観察を終えた後はオホーツク海側まで一気に移動。
移動した先で目にしたのはずらりと並ぶバードウォッチャー。
ここでは沢山のコミミズクを観察できるため皆さんコミミズクがお目当てのようです。
数が多いだけに観察・撮影の機会が半端ありません。
正に撮り放題といった様相。
こちらでは以前ラッコを観察している際に知り合った地元のお兄さんと合流し一緒に観察を楽しむことになりました。
ラッコのお兄さん、以前の旅行から戻って間もなく私のTwitterアカウントを探し当て連絡を下さいました。
それ以降時々連絡を取るようになり仲良くさせて頂いています。
観察の方に話を戻すとコミミズクはかなり近い距離を行き来することも多く様々な場面を見ることができました。
しかしここでも最大のネックとなったのは極寒と思える異常な寒さ。
トリッキーな動きを見せるコミミズクに対し即座にピント合わせをしなければなりませんが思うように指が動きません。
最大のチャンスはご覧の通り...
「ピンボケぇぇぇ」
ピントリングを思うように回せず撮影には四苦八苦させられましたが、ほぼ出ずっぱりの状態が続いたため下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる。
コミミズクの観察・撮影に夢中になっていたところ背後を歩いていたのはキタキツネ。
道路を横断しあわやトラックに轢かれる寸前でした。
ここで目に飛び込んできたのはホバリングしていたケアシノスリ。
今季は渡来数が多く日本各地で確認が相継いでいるようです。
ホバリングと移動を繰り返していたケアシノスリは電柱に止まってくれたので近距離から撮影。
コミミズクの観察を終えてラッコのお兄さんに誘って頂いたのはエゾモモンガの観察。
話によると前日は15時45分頃に姿を現したとのことで、現地には15時半まで着きたいとのことでした。
これまでに地元でモモンガを観察したことはありましたが、エゾモモンガは見たことがありません。
私としても非常に興味があったことからお言葉に甘えて観察に同行させて頂くことに。
現地へ到着し先ず始めに驚かされたのはエゾモモンガが塒としている虚の位置。
ほぼ目線の高さと云っても過言ではありません。
俄に信じがたい状況でしたが姿を現すまで寒さに耐えながらジッと待ち続けました。
15時45分を過ぎ「そろそろかな?」と思いましたが5分...10分...なかなか姿を現しません。
16時を過ぎて半ば諦めかけた頃...
「出てきた」
ひっくり返るほどの可愛らしさに悶絶。
エゾモモンガは虚から顔を覗かせると直ぐに出てくることはなく撮影会状態。
別のアングルから撮影しようと思い少し場所を移動すると更に一匹登場。
「何なんだ、この可愛らしさは...」
上に出てきた子は下の子の頭に手を掛け外の様子を伺っているようです。
言葉に出来ないほどの可愛らしさに興奮気味でしたが...
「もう一匹出てきた!」
モモンガ団子。
この時期は虚の中には何匹も入っているそうですが、3匹並んで見られる機会は少ないとのこと。
初めての観察で希な場面に遭遇できたのは望外の喜びでした。
虚から出たエゾモモンガは幹を駆け上がり別の樹木へ滑空。
流石に滑空する場面は撮影できませんでしたがテレビで見るような光景を目の当たりにし寒さを忘れて観察していました。
カメラの感度を上げて撮影しているため画像は明るく見えますが、あっという間に辺りは暗くなりエゾモモンガの観察会はここまで。
日程2日目は朝から晩まで楽しい観察が続く充実の一日となりました。
翌日、日程3日目はエゾフクロウを観察するため道東を縦断。
そちらの様子は後日更新の日記へ続きます。