2023年2月23日
本日更新する日記は旅先の思い出を綴る観察旅行記。
旅の舞台となるのは先月も足を運んた冬の道東。
以前の旅行記でもお話した通り前回は予行演習。
今回の旅が本番となります。
出発当日の朝、自宅を出て目にしたのは続々と北上していくガンの群れ。
自宅から秋田空港へ向かうまでの間、数千羽の数を目にしたでしょうか。
北帰行が本格化し中継地となる大潟村を目指していたようです。
秋田空港へ到着して出発前はこの日リニューアルオープンしたカードラウンジでゆったりとした時間を過ごしました。
ラウンジの利用はクレカのゴールドカードの提示、または830円を支払うことで利用が可能。
ラウンジでは以前と同様にソフトドリンクが提供される他、地元企業のお菓子の試食、地酒や比内鶏のスープの試飲ができるようになりました。
私は運転を控えていたため比内鶏のスープを頂きましたが、秋田県民が好みそうな濃口のスープは血圧上昇間違いなし。
定刻に秋田空港を離れ中継地の千歳空港へ。
ちょうどお昼時ということもあり千歳空港ではANAラウンジを利用し弁当を掻き込みました。
昨年の修行の成果として半永久的にANAラウンジを利用できるようになりましたが、現在の会員ステータスではスイートラウンジへ入ることは出来ません。
立ち入りを許されるのは最上級会員のダイヤモンドメンバーのみ。
プレミアムクラスの座席を取っても入ることができないため、スイートラウンジへ入りたいが為に今年はダイヤモンド修行を始めています。
秘密の花園は一体どの様なところなのでしょうか。
気になって夜も寝られません。
千歳空港を離れ道東の玄関口、中標津空港へ到着。
厳しい寒さを予想していましたがこの日の気温は2℃と暖かく、飛行機を降りて拍子抜けしてしまいました。
前回の-20℃は流石に寒かった。
今回の旅は友人ら4人で計画し私はドライバーを担当。
羽田からの直行便で道東入りをする友人を待ちましたが到着便は大幅に遅延。
到着ゲートで待っているとバードウォッチングツアーの看板を掲げた人がちらほらと...
ツアーを企画する大手の言葉にもある通り、2月下旬の冬の道東はフォトツアーの最盛期。
羽田からの直行便は大半の方がバードウォッチャーだったようで、大きな荷物を抱え次々とバスに乗り込む様子が見られました。
友人と合流したところで先ずはこの日の目的地、羅臼町を目指します。
海岸線に出たところで目にしたのは流氷の上に佇むオオワシの姿。
ちょうど流氷の話題が出ていた時とあってタイムリーな出会いに皆が歓喜しました。
撮影を始めて間もなくオオセグロカモメがオオワシをモビング。
カラスがちょっかいを出す姿はよく目にするもののカモメがモビングする姿を見るのは初めて。
面倒臭そうに飛び立ったオオワシを追いかけるオオセグロカモメ。
面白い場面に遭遇しましたがこれは肩慣らし。
翌日はもっと良い場面に出会えることを期待して再びハンドル握りましたが、気になるのは流氷の位置。
中標津空港へ向けて降下する際、機内から見えたのは国後側へ接岸している流氷帯でした。
流氷はその時々で位置が変わるため船に乗っても流氷帯へ到達できると限りません。
道中立ち寄った漁港からも流氷は確認できず...
こちらはヒメウの群れ。
何ヵ所かの漁港に立ち寄りましたが、港内で見られたのはウミアイサ・シノリガモ・クロガモなど。
残念ながらコオリガモやアビ類・ウミスズメ類は確認できませんでした。
中標津空港を後にして二時間ほどで羅臼町の中心部へ到着。
(ノンストップで走ると一時間程度)
期待とは裏腹にやはり流氷帯は遠く国後側へ接岸していました。
オジロ橋を渡り羅臼港の様子を見てみると港内には流氷の欠片が残っており、流氷の上にオジロワシの姿が。
こちらでは日没間際まで撮影と観察を楽しみ、暗くなってきたところで鷲の宿へ。
言わずと知れたシマフクロウを観察できる宿ですが、宿泊先は別にあったため見学コースでの予約でした。
ここで耳にしたのは前日まで1回目の飛来が22時頃だったという驚愕の事実。
鷲の宿で見られるシマフクロウは大きく分けて、日没後~真夜中~夜明け前と3回飛来します。
私の計画では日没後に飛来するタイミングを狙って観察を行い、早々に宿泊先へ移動して夕食を頂くというものでしたが一気に雲行きが怪しくなってしまいました。
こうなっては祈る他ありません。
宿泊先で夕食が提供されるのは19時半。
願わくば18時半頃に飛来してくれたらと思い外を眺めていましたが、なかなか姿を現さず...
一旦休憩を挟もうとカメラを置いてコーヒーを取りに移動すると突然ざわつく観察小屋。
どうやらシマフクロウが現れたようです。
ホッとしましたが、私の両手はコーヒーカップで塞がっており撮影できません。
だいたい私が何かすると良い場面が起こります。
定位置へ戻り目にしたのは樹木へ止まるシマフクロウの姿。
こちらは照明の当たらない場所であったため感度を上限まで上げて撮影を行いました。
樹木へ止まったシマフクロウはものの数分で降りてくることが多く、その瞬間を捉えようとカメラを構えましたが...
降りる気配が全く無し。
15分ほど経った頃でしょうか、やっと降りてきたシマフクロウは生け簀の魚を捕獲。
捕食している様子。
この後のパターンとしては再び魚を捕獲し上流側へ姿を消す事が多いため、飛び立ちの瞬間を狙ってカメラを構えましたが生け簀の前に佇み動きが無くなってしまいました。
普段と違った様子に困惑。
何が原因なのかと考えていると聞こえてきたのはシマフクロウの鳴き声。
『ボー ボー』と低く響く声が頻繁に聞こえてきました。
どうらや付近にもう1羽が飛来していたようです。
これほど頻繁に鳴き声を耳にしたことは無かったため、鳴き声に耳を傾け外を眺めていると車道側から大きな飛翔体が接近。
コンマ何秒かの間に別個体のシマフクロウだと分かりましたが、車道側から飛来する姿を目にしたのは初めて。
季節を変えて何度も足を運んでいる鷲の宿ですが初めての経験が多く「次に何が起こるんだ」という気持ちで観察を続けると...
『遠藤さ~ん』
宿の女将さんが私を呼んでいます。
はて、何事だろうと尋ねると宿泊先から電話が掛かってきているとのこと。
何故ここへ居ることが分かったのでしょう。
この時の時刻19時45分。
既に配膳の時間を過ぎていました。
「ほっといてくれ!」と言う訳にもいかず電話に出ると『21時で御膳を下げますからね』という警告に近い内容。
「今直ぐにでも行きたいのですが...」と平謝りをしていると突然飛び立ちの構えを見せるシマフクロウ。
「飛ぶぞ!」
決定的場面を撮り損ねました...
毎度のパターンに笑うしかありません。
残念ながら私は撮影できなかったものの幸いにも友人らはしっかりと撮影できていたので良しとしたいところ。
大急ぎで宿泊先へ向かい、荷物を整理すこともせず夕食会場へ。
初日からドタバタ劇を演じましたが無事にシマフクロウの観察を終えて日本酒で乾杯。
御膳の他に提供されたイクラ丼が非常に美味しく印象に残りました。
地元の食材をふんだんに使った料理を楽しみましたが、気になったのは今回の旅行でメインイベントに掲げていた流氷クルーズ。
翌日の天気予報を確認すると風は穏やかで流氷帯は動きそうにもありません。
併せてクルーズ船のブログに目を通してみたところ、この日は早朝と午前8時半出港の便のみが流氷帯に到達し、それ以降の便は流氷帯へ到達できなかったとのことでした。
最悪のケースを覚悟する他なく、暗澹たる気持ちで翌日の準備を整えこの日は早めの就寝。
2023年2月24日
日程2日目。
晴れ予報のこの日はカーテンの隙間から射し込む朝陽の光で目を覚ましました。
午前8時半出港の便に合わせて宿を出発し、間もなく見えてきたのは遥か沖に見える流氷帯。
「やはり動かなかったか...」
幸いにして天気は良かった為、ここで腹を括りクルーズ船では知床連山や国後島を背景に飛翔する海鷲の撮影を楽しむことに。
受付事務所で乗船の手続きを済ませていよいよ船に乗り込みます。
出港して勢いよく走るEverGreen号。
港外へ出て15分ほど経過した頃だったでしょうか、何気なく国後島を眺めると水平線に蜃気楼が見えました。
「一体何が見えているのだろう」と目を見張り更に5分ほど経過すると、見えてきたのは流氷帯。
黒く見える点は全てオオワシやオジロワシです。
「もしかして流氷帯に到達できるのか!?」
その後も船は勢いを落とすことなく走り続け遂に流氷帯へ到達。
諦めていただけに気持ちの反動が大きく感情のコントロールができません。
一言で云うと、ただ嬉しかった...
昨年は羅臼港周辺まで流氷が押し寄せていたこともあり出港して間もなく撮影に入りましたが、今回は沖まで出たことが功を奏し壮大な景色を背景に撮影を楽しむことができました。
また昨年よりも遅い時期に旅を計画したことにより、波に揉まれ立体的になった流氷を見ることができたことも良かった点です。
昨年の経験を基に今回使用した機材はフルサイズのボディ+500mm単焦点レンズ。
更にフルサイズのボディ+100-400mmズームレンズの2機構え。
※昨年はフルサイズのボディ+500mm単焦点とフルサイズのボディ+広角レンズの2機。
流氷クルーズでの海鷲撮影は単焦点の望遠レンズを使用した場合、被写体との距離が近過ぎて全身を写すことができない場面が多々あります。
そのためズームレンズを使用するとアップで、時には風景を絡めてとマルチに活躍してくれると感じました。
勿論、単焦点ならではのキレがあるのでその辺りは一長一短。
どの場面を切り取るかは個人の好みとセンスといったところでしょうか。
また流氷の位置によって撮影状況が異なるため一概に言うことはできませんが、今回のケースでは景観を活かしたいと考えズームレンズでの撮影が多かったように思います。
天気も良く羅臼岳を綺麗に写すことができました。
2階デッキへ昇ると流氷帯の全景を見ることができるため、1階とは違った景色を眺めることができます。
全体的な雰囲気を再現するためスマホで動画撮影を行いました。
短いものですがスマホでも充分に撮影できることが分かると思います。
機材や撮影方法の話は程々にオオワシやオジロワシについてお話すると、この日見られた個体数は200羽ほど。
餌を巡っての争いは幼鳥も負けじと奪い合っていました。
オオワシの方が圧倒的に個体数が多く、オジロワシは少なめ。
オオワシに比べるとオジロワシの方が俊敏に飛び回り、餌を浚っていくという場面が多く見られました。
齢による見た目の違いや個体ごとの個性、普段見られない仕草など肉眼でも観察を楽しめるのは“この時期・この場所”ならではでしょうか。
2時間のクルーズは本当にあっという間ですがほとんどの方は1時間ほど経過した時点で千枚以上の撮影枚数になっていることでしょう。
ミラーレスで高速連写が可能になった現代、場合によっては2時間のうちに数千枚という撮影枚数になる方もいらっしゃるかもしれません。
慣れた方は無駄に連写することなく的確に良い場面を狙っているようでしたが私は今回が二回目。
後に待っている選定作業を考慮して控え目にシャッターを切っていたものの、蓋を開けてみると撮影枚数は2時間のうちに二千枚近くになっていました。
帰港のアナウンスが入り次第に離れていく流氷帯を眺めクルーズ船での海鷲撮影はここまで。
この後の予定としては海沿いを南下し野付半島で観察の計画を立てていましたが移動前に道の駅へ寄り道。
こちらでのお目当てはホッケフライバーガー。
地の物を頂くことも旅の楽しみの一つ。
揚げたてで熱々のホッケフライバーガーは知床観光でお奨めの一品です。
道中、漁港をチェックしカモメ類を観察した後はユキホオジロをお目当てに野付半島へ。
道すがらに見られるエゾシカを撮影。
背景に写るのは国後島。
海辺を徘徊していたキタキツネも見ることができました。
ネイチャーセンターへ立ち寄りユキホオジロについて伺うと『現在は分散傾向にあり、何処で見られるか一概に言えない』とのこと。
季節が進み半島先端に自生するハマニンニクも食べ尽くしてしまったのでしょう。
何処で見られるか分からないユキホオジロを探すため、ここから延々と雪上を歩き回る雪中行軍が始まりました。
1月に観察した時に比べると積雪の影響から非常に歩き難く、想像以上に体力を消耗。
不意に頭上を通過したのは10羽ほどのハギマシコの群れでしたが、付近に降りることなく遥か彼方へ...
3時間以上歩き回った結果、肝心のユキホオジロは車へ戻る途中に見かけただけで終わってしまいました。
辺りはすっかりと暗くなり日没間際にエゾシカを撮影してこの日の観察はここまで。
2日目は中標津町の中心部に宿を取っていたことから、この日の夕食は定番となった回転寿司屋へ。
こちらは花咲ガニの軍艦。
腹いっぱいお寿司を食べて翌日の観察に備えました。
日程3日目は再び野付半島で観察を行い鶴居村へ移動。
そちらの様子は後日更新の日記へ続きます。