2023年7月31日
本日更新する日記は今月8日の観察分から。
この日は早朝からヨシゴイの観察へ出ましたが前週更新の日記に記載した通り残念な結果に終わりました。
当てが外れてやって来たのは我が職場。
広い敷地を有する私の職場では数多くの鳥類が繁殖しており可能な限りその推移を見守っています。
今回観察の対象としたのは日本へ夏鳥として渡来するコチドリ。
毎年職場で繁殖しているコチドリは雛の生存率が低く胸中穏やかでいられません。
抱卵中は営巣場所をバリケードで囲うなど人為的な失敗を阻止することができるものの孵化後に関しては見守る他できず...
「もっと安全な場所で」という私の気持ちとは裏腹に今季は2ペアが繁殖に入り既に1ペアから誕生した雛は飛べるまでに成長しました。
このペアから生まれた卵は3つ。
しかし現在職場を飛び交っている雛は1羽と生存率は約33%という結果です。
仕事が忙しくなかなか成長の推移を見ることはできませんでしたが、もう一つのペアは繁殖が遅く卵が孵化したのは6月28日。
同じく産卵数は3つでしたが辿々しい足取りで親鳥をついて歩く雛の姿は微笑ましく無事の成長を願っていたものの...
6月30日、確認できた雛は既に2羽になっていました。
そのうちの1羽が職場の車両に轢かれそうになる場面を目撃し安全な場所へ移動させて撮影したのがこちらの画像。
親鳥の警戒する声に反応し、その場に伏せてしまう習性からタイミング次第ではあっという間に命を落とします。
それも自然の摂理と考える方もいることでしょう。
しかし救える命を目の前にして見て見ぬ振りはできません。
職場の同僚らに雛の存在を伝え注意喚起しましたが、残念ながら翌日には轢死した雛を目にしました。
残るはあと1羽。
随分と前置きの長い記事になってしまいましたが今回の観察日記では「残された1羽の雛が職場内でどの様にして過ごしているのか」この部分にクローズアップして日記を綴りたいと思います。
職場へ来て始めに行ったのは親鳥の確認から。
通常であれば車内から観察を行いますが、うっかり雛を踏み潰してしまっては元も子もありません。
雛は親鳥から大きく離れることはないため徒歩での確認が雛の安全に繋がります。
難なく親鳥を確認すると一目散に草地へ駆け込む雛を確認。
親鳥が発した警戒の声に反応して身を隠したのでしょう。
雛が何処へ身を隠したのかを確認できたところで車内からの観察へ移行。
暫くすると親鳥が発したのは『ビュルルゥ』という優しい鳴き声。
親鳥の声に反応するように草地へ隠れていた雛は開けた場所へ姿を現しました。
立ち止まっては移動を繰り返し、動く様は成鳥と何ら変わりはありません。
こちらは採餌の場面を撮影した画像になりますが、容姿は幼くとも一丁前に餌を採っています。
コチドリは孵化して間もなく自ら餌を採り始めるため、生後一週間を過ぎたこの頃は採餌もだいぶ慣れていたことでしょう。
ストップ&ゴーを繰り返す雛を観察していると再び親鳥の優しい鳴き声が。
親鳥の元へ雛が走ってくると...
懐へ潜り込みました。
これは雛を保温する為の行動。
孵化して間もない雛は体温を上手く調整することができません。
そのためある程度成鳥羽に換羽するまでの間、親鳥が雛の保温を行います。
すっぽりと親鳥の懐へ潜り込み保温が始まって10分ほど経った頃、雛が顔を覗かせました。
雛を思う親鳥の愛情がひしひしと伝わるこの場面、誰が見ても優しく穏やかな気持ちになるのではないでしょうか。
親子のツーショット。
保温が終わると雛は活発に動き始め“自由奔放”という表現が適当なほどよく歩き回ります。
あくまでも私の印象になりますが、行動の制限を受けるのは親鳥が警戒の声を発した時のみ。
どちらかというと雛が動きたいように動き、親鳥が後をついて行くといったように見受けられました。
しかしこれは私の印象によるもので実際のところは分かりません。
親鳥が周囲の状況に気を配り、安全と判断する範囲内で動いている可能性も十分に考えられます。
不意に伏せたこの場面。
親鳥が頻りに上空を気にする様子か見られました。
私は確認できませんでしたが上空を猛禽類が飛んでいたのかもしれません。
警戒が解け活動を再開した姿を撮影したものですが、おしりが可愛い...
それから暫くして再び保温タイム。
この場面は何度見ても飽きることがありません。
潜り込む姿が可愛らしく、保温を終えて顔を覗かせる姿もまた可愛らしい。
この時は伸びの姿も見ることができました。
あどけない容姿に笑みの絶えない一日となりましたが...
この観察から一週間後。
秋田県は大雨による災害が多発し、特に私の住む秋田市は甚大な被害が発生しました。
まだ体温の調整が上手くできない雛にとっては厳しい状態が長時間続き絶望的。
正直なところ雛の命は無いものと思っていました。
連休明けの18日、職場の様子を恐々と見てみたところ雛の無事を確認。
一体あの大雨をどの様にして凌いでいたのか...
時間毎の雨量を見るに親鳥が傘となったとしても耐えられるものではありません。
職場の建物などを利用して難を逃れたとしか考えられませんが、雛の無事を確認でき安堵しました。
様々な苦難を乗り越えている雛だからこそ無事の成長を願い、本日の観察日記はここまでにしたいと思います。