2024年2月8日
本日更新の日記は旅先の思い出を綴る観察旅行記。
今回の目的地は先月も足を運んだ道東の根室半島。
こちらでは春先になるとエトロフウミスズメの群れが見られるということを知り、ここ数年観察の計画を練っていましたが諸々の事情により実現できずにいました。
満を持して秋田を離れた今回の旅。
観察の要となるのは天気と海況ですが果たして望み通りの観察はできるのか...
千歳空港を経由して中標津空港へ到着したのは13時05分。
初日は移動日と捉え特に観察を予定していませんでしたが、翌日の下見を兼ねて納沙布岬を目指すことに。
道すがら見られたのは氷上を歩くタンチョウ。
こちらは風蓮湖の畔にある某観察スポット。
先月見られたオオワシやオジロワシの群れは全く見当たらず。
ちょうどこの頃、道北の宗谷岬ではワシの渡りが続いている情報もあり時期的にこちらの個体群も移動してしまったのかもしれません。
中標津空港を出発して約二時間。
本土最東端の地、納沙布岬へ到着しました。
眼下には疎らに流氷が見られ対岸に広がるのは歯舞群島。
野付半島から見る国後島に比べても遥かに近く、目と鼻の先で不法占拠を続けるロシアには憤りを感じます。
岬から暫し海上を眺めてみましたがエトロフウミスズメは認められず、この後は歯舞漁業協同組合へ。
翌日のクルーズに備えて集合場所や受付の手順を確認し万全の態勢を整えました。
夕食はお約束の回転寿司。
道東の旅では外すことのできない根室花まる。
参考までにお店は根室店と中標津店の道東二店舗の他、道内各地だけではなく東京にも店舗があるようです。
お寿司は勿論のこと、私のイチ推しは出汁巻き玉子。
焼きたてのものが提供されるため早めの注文がお奨め。
2024年3月9日
乗船当日を迎えた日程2日目。
気になるお天気は陽射しが届き良好であったものの、北東の風がやや強めに吹き海上には波浪注意報が出ていました。
漁協はどのような判断を下すのか...
宿を出発して間もなく漁協から着信。
吉報であることを祈りつつ応答したところ『漁港内へ流氷が入り込み船を出すことができません。そのため本日のクルーズは午前、午後の便とも欠航が決まりました』と予想もしなかった知らせが。
流石に絶句。
船に乗るため足を運んだ根室半島だったのに...
道を断たれてしまった私は途方に暮れましたが、1羽でもエトロフウミスズメを見ることができたらと漁港巡りをしてみることに。
最寄りの漁港へ着いて間もなく目にしたのはコオリガモ。
お目当てとは異なるものの秋田では滅多に見られるものではありません。
コオリガモを見たことによりエトロフウミスズメが見られなくとも北海道らしい観察ができればと気持ちを切り替え漁港巡りを楽しむことしました。
一定の距離を保とうとするコオリガモを眺めていると足元にケイマフリが浮上。
あまりの近さにピントを合わせることができず、少し離れたタイミングを狙うと大きなあくびを見せてくれました。
間もなく羽ばたきも見ることができ漁港巡りは幸先の良いスタートです。
こちらのケイマフリを暫く観察しましたが
程近い場所で別個体のケイマフリを発見。
新たに発見した個体も私を気にすることなく岸壁近くまで接近。
こちらの個体も羽ばたきを何度か見せてくれ、ケイマフリだけでも相当な撮影枚数に。
他に海鳥が見られないかと移動を繰り返していると港の中央部から岸壁に向かって泳ぐハシブトウミガラスを発見し進行方向へ先回り。
想定通り近付きつつあるハシブトウミガラス。
進行方向は想定通りであったものの思った以上に速く泳いできたためピント合わせが追い付きませんでした。
岸壁に辿り着いたハシブトウミガラスは競泳選手のようにターンをすると再び港の中央部へ。
一体何の為に岸壁へ寄ってきたのか不明ですが私にとってはラッキーとも思える場面でした。
更に漁港巡りを続けるとアビを発見。
しかし一度潜水すると何処へ浮上するのか見当もつきません。
暫く動向を探ってみると一定間隔で浮上することが分かり、山を張って先回り。
これが功を奏しドンピシャとも思える場所へ浮上。
アビもまた岸壁の際で見ることができ千載一遇のチャンスを活かすことができました。
あまりの近さに全身を写すことは出来ませんでしたが、港だからこそ見ることのできた場面と言っても過言ではありません。
移動する船に乗っての観察ではこうした距離で見ることは難しいことでしょう。
その後もモグラ叩きのような観察が続くと次第に距離が離れてしまったためアビの観察はここまで。
一頻り海鳥の観察を楽しんだところで欠航となってしまった歯舞漁港の様子を見に行ってみることにしました。
少しでも状況が改善された場合、翌日の乗船に望みを持つことができます。
しかし待ち受けていた現実は...
全面流氷に覆われた港を見て言葉を失いました。
依然として吹き付ける北東の風。
どう考えても流氷が港を離れることはないでしょう。
天候または海況が原因で欠航した場合を想定して二次的に考えていたのは納沙布岬からの観察。
当初想定していた理由とは異なりましたが岬へ移動してみると...
前日は沖にあった流氷帯が本土側へ押し寄せ観察不可。
いよいよもって諦める他なかった私の目に入ったのは北方館。
北方館とは北方領土の関係資料が展示される啓発施設。
恥ずかしながら領土問題については軍事的目線でしか知識がなく、後学の為にと施設を見学してみることに。
施設2階の展示室へ上がると歯舞群島を覗く為の望遠鏡がずらり。
望遠鏡越しに見る歯舞群島は間近に感じられ、何等かの施設から発光する明かりやゴムボートに乗って作業をしているロシア人を見ることができました。
我が国の領土とは言え実効支配しているのはロシア。
ここには存在しないはずの国境があり、弱腰の日本はこの国境を越えることがありません。
事実、北方四島上空をロシア軍機が飛行しても空自の戦闘機が対領空侵犯措置のためスクランブル発進することもありません。
一方でロシア軍機は平然と我が国の領空へ侵入し、時には日本列島を一周することもあります。
現状を考えると返還される未来は想像できず物思いに耽ながら歯舞群島を見ていましたが、用途外と分かりつつも望遠鏡を用いて暫し海鳥ウォッチング。
見えない国境付近にエトロフウミスズメの群れが浮かんでないかと丹念に見てみましたが、それらしき浮遊物は見当たらず...
この日の2週間前、納沙布岬では万単位のエトロフウミスズメが見られていたそうです。
もしかするとほとんどの個体が渡ってしまったのかもしれません。
エトロフウミスズメを確認できないまま北方館を後にすると偶然にも北見在住の友人と遭遇。
広い北海道でよくもこんな偶然があったものだと遅めの昼食を一緒に取ることにしました。
私が昼食に選んだのはエスロカップ。
エスロカップとはバターライスにカツを乗せデミグラスソースをかけた根室のご当地料理。
友人曰く根室には昔ながらの純喫茶が多いとのことでモダンな雰囲気のなかご当地料理を頂くことができました。
友人はラッコの観察へ出かけたため私は再び漁港巡りへ。
漁港へ着いて間もなく岸壁の際を泳ぐケイマフリを発見し間近で観察。
比較的近い距離でオオハムも見ることができました。
お目当てのエトロフウミスズメを見つけることのできないまま時間だけが過ぎていき、この日の探鳥はシノリガモとクロガモの群れを撮影してタイムアップ。
翌日の乗船も危ぶまれる状況でしたが、一縷の望みを託し早めの休息を取ることにしました。
2024年3月10日
泣いても笑っても2泊3日の旅はこの日が最終日。
この日も陽射しの届く良いお天気でしたが...
漁協から入った連絡は『午前、午後の便ともに欠航』という残念なお知らせ。
覚悟は出来ていましたが滲む悔しさ。
こうなっては漁港へ入っている個体を見つける他ありません。
急ぎ足で最寄りの漁港へ向かったところ前日と様子が一変。
港へ流氷が入り込み海鳥どころかカモ類も見当たりませんでした。
予想もしない展開に肩を落としましたが、別の漁港ならばと移動したところ...
こちらの港も流氷に覆われ八方塞がり。
「何もこのタイミングで」と流氷を恨めしく思いましたがこればかりは仕方のないこと。
この時点でエトロフウミスズメの観察を断念し、残された時間は中標津空港周辺で小鳥の観察を楽しむことに決めました。
移動の際、電柱に止まるオジロワシを目撃し素通りするところでしたが気になったのは足元。
電柱という電柱にT字型の金具が取り付けられており、まるで止まり木のようです。
ワシたちが止まり易いよう設置されたものなのでしょうか。
海沿いを走ると所々にクロガモの群れが見られ、何気なく双眼鏡を覗いてみたところクロガモの群れに混ざるビロードキンクロの群れを発見。
ここで気になったのはアメリカビロードキンクロ。
近年道東ではアメリカビロードキンクロの観察例が多くなっており、当該個体が混ざっていないかと注視したところアメリカビロードキンクロの特徴を示す個体を見つけることができました。
頭部の形・コブの大きさ・嘴の特徴からアメリカビロードキンクロと判断。
もう少し近くで見られたら良かったのですが残念ながら距離は離れる一方。
海岸を歩いて撮影したため距離を取られてしまいました。
中標津空港周辺に到着してからは私にとって相性の悪いシマエナガを探してみるのとに。
公園を散策して最も観察しやすかったのはシロハラゴジュウカラ。
次いでエゾコゲラ。
キタキバシリもよく見られましたが角度によっては枝にしか見えません。
擬態効果が抜群で面白い写真になりました。
肝心のシマエナガは...
運良く見つけることができたものの数カット撮影すると直ぐに見失ってしまいました。
やはり私にとっては相性の悪い鳥です。
こうして幕を閉じた今回の旅。
残念ながらエトロフウミスズメを見ることはできませんでしたが、数種の海鳥を間近に見る楽しい時間もありました。
やり残しがあるからこそ根室はまた来年。
次の機会こそ洋上を移動するエトロフウミスズメの大群を見てみたいものです。
2024年 野鳥観察の旅 in 道東 (3月) はこれにておしまい。