前回のあらすじ。
正月に企画した台湾の観察旅行。
日程初日は移動に時間を費やし二日目から本格的な観察を計画していましたが台北は生憎の空模様でした。
当初の予定では台北での観察を終えてから台中へ移動する予定だったものの天候を考慮した結果、台北での観察を後回しにして台中へ一気に南下。
道中、紆余曲折ありながらも無事目的地へ到着すると小鳥たちが沢山。
赤い実のなる木へ飛来する小鳥たちを終日観察し楽しい時間を過ごすことができた一方、宿泊先では言語の壁や文化の違いに面食らう場面も。
2025年1月3日
前夜は台湾人宿泊客のカラオケを延々と聞く羽目となり耳を塞ぎながら床に就きましたがカラオケ以上に堪えたのは凍えるほどの寒さ。
観察中は寒さに震えるということはなかったものの、流石に夜ともなると気温は低下し薄い掛け布団一枚では寝られたものでありませんでした。
準備していた防寒着が役に立ったのは就寝時。
真冬の台湾は気温差が激しいため注意すべき点なのかもしれません。
日程三日目も実のなる木で観察を始めましたが、最初の出会いは前日も目にしていたベニサンショウクイ。
この日は「赤いやつ」の直ぐ傍に「黄色いやつ」も。
現地ではヒレンジャクとキレンジャクのように別種と考えていましたが「黄色いやつ」はベニサンショウクイの雌であることが判明。
つまり赤が雄、黄が雌ということになりますが二羽のベニサンショウクイは追いかけ合うように飛ぶ場面が多く、日本で見られるサンショウクイと同様に雌雄の絆が強いのかもしれません。
ベニサンショウクイの動きを観察していると付近に新顔が登場。
こちらは渡航前に予習していたタイワンツグミ。
新顔の登場を喜んだもののタイワンツグミは一瞬のうちに飛去。
残念ながら証拠写真を残して終わりという結果に…
間もなく鈴虫の音に似た鳴き声を発する小鳥の群れが飛来し、よく見てみると前日も目にしていた「顔がオレンジのやつ」でした。
前日は証拠写真すら残せずにいましたが、この時は群れの規模が大きく観察し放題・撮り放題。
調べてみたところこちらの鳥はコシジロムシクイ。
現地では和名を知らずにいましたが観察時に腰の白い部分が見えていたこともあり和名を知ってなるほど納得。
ムシクイと名が付くだけあって動きは忙しなく、個体数が多くなければ和名通りの特徴を見れなかったかもしれません。
こちらのカットは最短距離の場面。
コシジロムシクイの観察をしていると実のなる木にまたもや新顔が現れました。
「派手なエナガ」と思えたこちらの鳥は直感通りのズアカエナガ。
頭でっかちで派手な配色。
マスコットキャラクターを思わせるズアカエナガは生きたフェルト人形を見ているかのよう。
日本で見られるエナガに比べ体長は小さくキクイタダキと同大だったでしょうか。
こちらは個体数が少なく、観察できたのはこの時のみ。
ズアカエナガの姿が見えなくなるとタイワンシジュウカラが観察し易い場所へ飛来したためそちらを観察していると…
台湾人バードウォッチャー同士の口論が勃発。
何を言っているのか分かりませんでしたが、雰囲気的に撮影場所を巡っての口論であることに間違いなさそうでした。
この時は実のなる木を中心に大勢のバードウォッチャーが三方に分かれ観察していたものの、一名だけ至近距離に立ち塞がっており撮影マナーを注意したことから始まったのでしょう。
ここまでは日本でもよくある話。
「何処の国も同じだな」と思い傍観していると驚いたことに注意された側の台湾人がカメラを振り回し殴りかかりました。
激しい揉み合いとなり注意した側の台湾人は正拳突きで画面殴打。
注意された側の台湾人は更に興奮し乱闘が続くとその勢いからレンズがもげて弧を描くように谷底へ…
長いことバードウォッチングをしていますがレンズの飛翔シーンは初めて見ました。
乱闘の末、注意された側の台湾人は転倒して仰向けに。
これで終わりと思いきや注意した側の台湾人は留めを刺しに顔面めがかけてヒールキック。
注意された台湾人バードウォッチャーは流血した顔面を抑えその場を後にしましたが、この騒ぎで小鳥たちは姿を消してしまいました。
これは歴とした傷害事件。
こうしたことが日常茶飯事にあるのか分かりませんが何とも後味が悪いものです。
暫くすると小鳥たちは戻ってきたものの、一旦この場を離れミカドキジを探してみることに。
標高2000m付近まで車を走らせると今まで耳にしなかった鳴き声を確認。
辺りを探してみるとガビチョウのようなフォルムの鳥を発見しました。
後に調べたところこちらの鳥はキンバネホイビイという和名のようですがホイビイとは一体何を指しているのか…
和名は安直なものが多く、だいたいは頷けるもののホイビイだけは意味が分かりません。
更に調べを進めると最近は別名で呼ばれる方がメジャーとなりタイワンキンバネガビチョウと言われているのだとか。
誰が命名しているのか分かりませんが和名は統一して頂きたい。
これといった動きを観察することはできませんでしたが、キンバネホイビイはけたたましい鳴き声を発するという印象だけが強く残っています。
延々と車を走らせ標高2600m付近まで登ったもののお目当てのミカドキジは一切見かけず。
ミカドキジと併せてタカサゴマシコも探してみましたが残念ながらこちらも私の目に入ることはありませんでした。
この頃から眩しいばかりの陽射しが届くようになり2600m付近でも気温は9℃と暖かく(秋田人感覚)、歩いて周辺を散策してみることに。
雑木林に足を踏み入れると地面を動き回る小鳥の群れを発見。
よく見てみるとビンズイと判明。
しかしこちらのビンズイ、日本で見られるビンズイとは異なり異常なまでに動きが緩慢。
雑木林では相当な数を目にしましたが、歩いて近寄っても逃げる素振りもなくのそのそと動き回る始末。
足元を動くビンズイを観察していると見慣れない鳥の姿が…
こちらは予習していた台湾の固有種アリサンヒタキ。
アリサンヒタキは標高の高いところに生息する鳥とあって険しい山道を登ってきた甲斐があったというものです。
警戒心も然程なく日本で見るコマドリやアカヒゲのような感覚。
アリサンヒタキもまた見たい鳥リストに入れていただけに嬉しい出会いでしたが、雑木林ではタイワンリスも見ることができました。
日本にも特定外来生物として定着しているようてすが私が目にしたのはこの時が初めて。
目新しさも手伝って撮影しようと思ったところ小型のリスを発見。
こちらについては調べてみても種が分からず。
もしかするとタイワンリスの幼体なのかもしれません。
更に山中ではキョンの姿もありましたが、キョンもまた日本では特定外来生物として定着しているようです。
残念ながら標高の高い場所ではミカドキジを見つけることができずに終わり、実のなる木へ戻ると「額がオレンジのやつ」を発見。
こちらの和名はズアカチメドリ。
ズアカチメドリもまたサイズが小さく動きは俊敏。
そのため証拠写真を残すことが精一杯。
生態については何も分からないまま姿を見失ってしまいました。
間もなく付近へ「緑の尖ったやつ」が飛来。
こちらのとんがりコーンはアオチメドリという和名のようですが、似たような容姿をしたタイワンシジュウカラとカンムリチメドリは台湾の固有種。
その一方、アオチメドリは分布域が広く他の国でも見られるようです。
アオチメドリが定点に飛来したのはこの時のみ。
私の見る限り実を食べることなく飛去してしまったため通過個体だったのかもしれません。
このように撮って終わりという種もありましたが、前日と違った種を見ることができ喜んでいたところ更に新顔が登場。
こちらはキバラシジュウカラ。
日本で見られるシジュウカラのようにカラ類の混群が見られるのではと期待したものの、この時に見られたのはキバラシジュウカラのみの群れでした。
行動としては特筆すべき点が無く色違いのシジュウカラを見ているといった印象。
派手な見た目こそ海外の鳥といった印象を持ちますが、台湾はちょうど日本と中間といったところでしょうか。
だいぶ陽が傾き景色が朱色に染まってきた頃、眼下をヤブドリが通過するようになりシャッターチャンスを狙っているとタイワンツグミが登場。
しかしタイワンツグミは警戒心が強いのか目視できたのは僅か数十秒。
直ぐに藪の中へ潜ってしまい観察には程遠い状態でした。
藪の中を動くタイワンツグミを注視していると思わぬ物を発見。
見つけたのは弧を描き飛翔した望遠レンズ。
一時の感情で60000元の損失です。
何も自分の商売道具で殴りかからなくても良かったのでは…
斜面に横たわるレンズを見ているとタイワンツグミが実のなる木へ飛来。
ようやく採餌の場面を見ることができました。
夕方になって2羽のタイワンツグミが交互に見られるようになり、この日は17時まで粘って観察終了。
宿泊先へ戻る途中は再びサンケイが見られるかもしれません。
淡い期待を抱き慎重に車を進めたものの、前日以上に往来する車が激しく残念ながら姿を見ることはできませんでした。
このように日程3日目は大半の時間を実のなる木で過ごしましたが、日程4日目は当初の予定を変更して台中の公園へ。
そちらの様子は後日更新の日記へ続きます。