2025年3月17日
本日更新の日記は2月16日の観察から。
最強・最長寒波が一段落した観察日の前日。
久しぶりに穏やかな天候だったこともあり秋田市上空を沢山のガンが北上しました。
私の職場は渡りのルート下に所在しているため真上若しくはやや東側を飛ぶ個体を宮城組、西側を飛ぶ個体を山形組と判断することができます。
※新潟組は海岸線に近い場所を飛ぶため職場から見ることはできません。
こうした様子から大潟村周辺はさぞかし賑やかになっているだろうと思いましたが、現地へ行ってみると想像したほどのガンは見られず...
一体何処へ行ったのやら。
この日も場所を転々とながらお目当ての鳥を探したものの気配すら感じられず骨折り損のくたびれ儲けという結果に。
唯一の救いはこちらのコミミズク。
静止画では伝わりませんがコミミズクは酷く興奮状態にあり、左右に首を動かし周囲を警戒しているようでした。
下手に近付くことができず遠巻きに様子を伺っているとコミミズクは付近の田んぼへ移動。
天候が良かったこともあり田んぼの方が落ち着いて羽を休めることができたのかもしれません。
日頃の疲れもあってかこの日の探鳥は集中力に欠け、いつの間にか雑な動きになっていたこともあり早めの帰宅を決断。
帰宅前にオオワシの様子を伺ってみたところポツンと氷上にその姿がありこちらをスナップ撮影。
この時、私を見つけた知人が声を掛けてくださり『反対側から見た方が条件良いですよ』と観察のご指南をいただきました。
確かに知人が仰るように反対側から見ると好条件。
早速そちらへ移動しようとハンドルを握った瞬間、タイミング悪く飛び立ってしまったオオワシ。
『ああぁ…』と残念そうに声をあげた知人でしたが「まぁまぁ」と笑い飛ばしお互いの近況報告を兼ねて暫く雑談を交わしました。
雑談を終えて車を進めると飛び立ちの瞬間の撮り損ねたオオワシが氷上に。
当初に比べると圧倒的に距離が近く再びカメラを構えました。
飛び立ちまで15分ほど待ったでしょうか。
この時は撮影に成功。
車へ戻り帰宅しようと思ったところオオワシが氷上へ戻り激しい挙動を見せています。
何か捕まえて戻ったのだろうかと様子を見てみましたがこれといって獲物の姿は見当たりません。
頻りに氷を囓るような仕草が見られ嘴を洗っているのか、若しくは水分補給をしていると思ったのですが…それにしては長過ぎる。
水分補給にしてもここまで飲むことはないだろうと観察を続けたところ、まるで子供が地団駄を踏むように氷を踏みつけるオオワシ。
全く以て意味の分からない行動。
これまでにこうした動きを見たことがありません。
踏む・蹴るといった行動を見せたかと思えば再び氷を噛りはじめます。
暫くこうした行動が続くと挙動は更に激しくなり翼をバタバタと羽ばたかせ、まるでタンチョウの求愛ダンスを彷彿とさせました。
その後も噛じる、蹴る、羽ばたく行動を繰り返します。
いつの間にかギャラリーが増えており周囲にはバードウォッチャーも沢山。
謎の行動を注視していると…
「なんとっ!?」
突然オオワシの足に魚が。
何も無いところからマジシャンがハトを出したかのような衝撃。
ようやく事態を飲み込むことができました。
オオワシは氷に閉じ込められた魚を取り出すため懸命に氷を砕いていたようです。
それにしても物凄い執念。
この様子を何処から見ていたのか直ぐにカラスが現れるとオオワシは獲物を抱えてその場を離脱。
執拗に追いかけるカラスのペア。
付近の田んぼへ降りたオオワシが魚を食べ始めるとカラスはヒットアンドアウェイの動きを見せ、おこぼれにあやかろうとこちらもまた一生懸命の様子。
思いもよらない場面に遭遇し私の観察欲は満ち溢れました。
お目当ての鳥はこの日も見つけられなかったものの、楽しい時間を提供してくれたオオワシに感謝しかありません。
本日の観察日記はこれにておしまいです。
…となるはずでしたが帰宅してからちょっとした出来事が待っていました。
ゆっくり昼寝をしようと布団に入って間もなく、消し忘れたLINEの通知音。
確認すると自宅近くの田んぼに沢山のマガンが入っておりシジュウカラガンも混ざっているとの報告。
近所に住むライトなバードウォッチャーはとても嬉しそうな様子でした。
物珍しい光景に近所の方々が集まりスマホで撮ろうと群れを飛ばしているとのことでしたが…
善は急げ。
自宅出て間もなくふとした疑念からライトなバードウォッチャーと電話を繋ぎながら現地へ向かうことに。
当時の会話がこちら。
「黄色いアイリングだけでカリガネとは判断できないぞ」
『え…?』
「近くに居るマガンと嘴を比べてみろ。カリガネの嘴は色も大きさも違うから」
『マガンと同じかも…』
一気に雲行きが怪しくなりました。
5分ほどで現地へ到着するとライトなバードウォッチャーの真横には3羽のマガンが。
このうちの一番右側の個体をカリガネだと言うのです。
当該個体を撮影し拡大してみると確かに黄色いアイリングの特徴を持っていますが、こちらは紛れもなくマガン。
とんだガセネタを掴まされました…
しかしバードウォッチングを始めて間もない頃の私も同様の誤認をしたことがあり、現在の野鳥の会秋田県支部長より教えを頂いたことがありました。
致し方のないことでしたが、自宅近くに飛来する群れは秋田県以南の地域で越冬していた個体群。
本物のカリガネが混ざっていてもおかしくありません。
双眼鏡でじっくりとチェックを重ねていると…
何と吃驚、ヒメシジュウカラガンを発見。
棚から牡丹餅の展開に喜びを隠しきれませんでしたが、亜種ヒメシジュウカラガンの主な識別点は以下の通り。
・亜種シジュウカラガンに比べると嘴が短く小さい
・亜種シジュウカラガンより首が短く帯状の白い輪が無い
・胸部から腹部にかけて褐色みを帯びる
・静止時に初列風切が尾羽より突出している
亜種シジュウカラガンを観察していると時々白い首輪の無い個体も見られますが、その点のみで亜種ヒメシジュウカラガンと判断することはできません。
これらの識別点を踏まえ画像を拡大してみると…
気になるのは頭頂部の特徴。
亜種シジュウカラガンは頭頂部が平らで頭部の形が角ばって見えるのに対し、亜種ヒメシジュウカラガンでは頭頂部が丸い傾向があるそうです。
上に掲載した画像を見ると亜種シジュウカラガンの特徴を示しており、画像によっては頭頂部が丸く見えるカットもありました。
果たしてこの個体は一体...
シジュウカラガンは個体差が激しく稀にカナダガンのような首の長い個体も見られます。
そのため個体差の範疇となる可能性も否めず今回の個体は亜種ヒメシジュウカラガンを疑う個体とすることに。
周辺には物珍しさから歩いて近寄る近所の方々が続々と現れ落ち着いて観察ができない状態。
これが鳥屋相手であれば「馬鹿野郎、この野郎」の話ですが一般の方、ましてや近所の方を注意することはできません。
飛ばされる前にカリガネを見つけださなくてはと一旦ヒメシジュウカラガンを疑う個体の観察を止めて再び双眼鏡を覗くと…
本命を発見。
距離が遠かったためこちらは全て画像を拡大。
本物が混ざっていると知ったライトなバードウォッチャーはだいぶ焦っていた様子。
電話越しに『えーっ!!何処!?』という声が聞こえてきました。
私とは見る角度が異なるため説明しようにも上手く説明することができません。
最終的にはライトなバードウォッチャーも確認できたようだったので今回は良い勉強になったのではないでしょうか。
宮城県に比べると秋田県でのカリガネ観察は難易度が高く意識してもそう簡単に見つかるものではないため今回の観察例は非常にラッキーなものでした。
何よりも自宅近くで見られたことが良かったと言えるでしょう。
ガセネタから始まった今回の観察。
私の昼寝時間を奪った罪は大きく本来であれば市中引き回しのうえ討ち首獄門とするところでしたが、今回はヒメシジュウカラガン疑う個体とカリガネを見られたことを考慮して無罪放免とすることに…
今回の観察はこれにて一件落着。