前回のあらすじ。
今回の旅行は今年二回目の渡航となる隣国・台湾。
気軽に渡航できるという点から再び台湾の旅を計画しましたが、目的地に選んだのは台湾本土から西に約200km離れた金門島。
海外での乗り継ぎは初めてということもあり多少不安な面があったものの、思ったほど苦労することなく台北を離れることができました。
金門島へ到着したのは現地時刻の19時25分。
理想としては当日中にレンタカーを調達したいところでしたが、生憎レンタカー店舗の営業時間は19時30分まで。
そのため宿泊先までの移動手段としてタクシーを利用すると、目にしたのはアオショウビンやヤツガシラのイラスト。
特にヤツガシラのイラストが多く描かれており、翌日からの観察に期待せずにはいられませんでした。
2025年5月23日
日程二日目。
鳥たちの賑やかな声に目を覚まし、時計を見ると午前5時。
外の様子が気になり寝惚け眼のままロビーを出てたところ目にしたのは沢山の鳥たち。
ロビー前に立っているだけでもスズメ・ツバメ・シロガシラ・シキチョウ・タカサゴモズ・クロウタドリ・ハッカチョウ・カササギが目に入り、居ても立っても居られなくなった私は慌てて準備を整え早朝の観察へ。
宿周辺をぶらりと歩いて感じたのは鳥密度の濃さ。
但し徒歩での探鳥だったためかどの鳥にも一定の距離を取られてしまい、シキチョウを写した画像もご覧の通り。
勝手ながら台湾の鳥は警戒心が緩いと思っていただけに意外な展開。
私の期待値が高過ぎたのか想像するような観察ができずストレスは溜まる一方でした。
悶々としながら歩いていると目にしたのは電線止まりのヤツガシラ。
やっと訪れた期待通りの光景です。
人工物に止まる姿に金門島らしさを感じ、繁殖地ならではの姿を写真に収めようとカメラに手をかけた瞬間…
別個体が現れ求愛給餌。
毎年のように地元でもヤツガシラを観察していますが、流石にこうした行動は見たことがありません。
間もなく耳にしたのは『ポポポッ゙ ポポポッ゙』という初めて聞くヤツガシラの鳴き声。
日本では珍鳥扱いのヤツガシラも金門島においては場所を問わず見られる普通種でした。
警戒心を感じさせないヤツガシラにストレスフリーの観察を楽しんでいたところ聞こえてきたのは『ミューミュー 』という子猫のようなか細い鳴き声。
何が鳴いているのか分からず声の出処を探ると…
姿を現したのはアオハウチワドリ。
セッカ科の鳥とあって行動はセッカそのもの。
草地を俊敏に動き回っていましたが、特定の場所に執着する様子から営巣しているものと判断。
おそらくアオハウチワドリは私を警戒していたのでしょう。
早々にその場を離れ小路を歩いていると突然中国語で話しかけられ『有很多鳥』と畑のなかに手招きされました。
私を台湾人バードウォッチャーと思ったのか容赦なく中国語で話しかけてくる地元の老人。
正月以降、毎日のように中国語の勉強を続けていましたが私が言葉を理解し話すことができるのは買い物などの限られた場面です。
早口で聞き取れない言葉も多く、日本人であることを伝えると老人は笑顔で周辺の木々を指差しました。
確かに畑周辺は鳥が多かったもののカメラを構える動作に敏感。
こちらのハッカチョウもカメラを構えた瞬間、直ぐに飛去してしまい日本とは異なる警戒心を感じました。
やはり車内からの観察が適切であると考え早朝の観察はここまで。
改めて準備を整えレンタカーの調達へ向かいましたが、台湾のレンタカー事情や現地での運転について。
年始の旅行記では触れていませんでしたが、台湾の車はリアウィンドウだけではなくサイド、フロントと全面スモークの車が多く存在します。
そのため車内の様子を伺い知ることはできません。
暑さや紫外線は軽減されるものの晴天時であっても車内は薄暗く、鳥を探し難いのが難点でしょうか。
金門島を運転して特に気になったのはオービスの多さ。
設置箇所手前ではこうした標識を目にします。
少し進むとカメラが設置されており、オービスが多いためか台湾本土に比べると乱暴な運転をする人が少ないと感じました。
また台湾本土では見ませんでしたが、金門島にはラウンドアバウト(環状交差点)が多く、慣れない方は戸惑いを感じるかもしれません。
レンタカーを借りてまでバードウォッチングをする人がいるのか分かりませんが参考までに。
レンタカーの調達を終えた後はこの旅でお目当てとしていたハリオハチクイの観察へ。
金門島に夏鳥として渡来するハリオハチクイの営巣地が手厚く保護されていると知り、今回の旅を計画しましたが…
営巣地を見つけることができず。
「こんなはずては」と右往左往していると畑で採餌するクビワムクドリを発見。
ムクドリと名が付くものの体長は大きくトラツグミ大。
大きさに加えて容姿のインパクトも強く、興味津々に観察を続けているとハリオハチクイが上空を通過しました。
飛んで行く先に営巣地があるものと考え動向を探った結果…
無事目的地へ到着。
迷彩ネットで覆われたトンネルを突き進むと観察・撮影用の穴が幾つもあり、こちらから営巣の様子を観察できるようです。
早速覗き込むと目の前に広がる土壁には無数の穴が。
営巣地周辺には人工的に止まり木が設けられ羽を休める個体も多く見られました。
こちらは巣造りの様子を撮影した拡大画像。
勢いよく土を掻き出している様子が見て取れます。
入れ代わり立ち代わり止まり木へ飛来するハリオハチクイを見ているとチョウやトンボを咥える個体を頻繁に目撃。
こちらは求愛給餌のため捕獲した獲物であることが分かりましたが、餌を受け渡す個体、受け取ってもらうことができずいつまでも咥えている個体と様々。
なかには交尾する個体も見られました。
想像以上の観察を楽しむことができたものの、こちらの営巣地は早い時間ほど光線の条件が厳しくなるようです。
そのため順光となる時間帯に新たな観察を計画し、この後は観光を兼ねながら行き当たりばったりの観察を楽しむことにしました。
金門島の市街地へ入ると目にしたのは立派な寺院。
斜向かいには大きな商業施設がありマクドナルドも。
和洋折衷ならぬ中洋折衷の景色を楽しんでいると目に飛び込んできたのはクビワガラス。
しかし出会いは一瞬。
特徴が分かるような画像を残すことのできないままクビワガラスはあらぬ方向へ…
見失ったクビワガラスを探していると雌を追い回すベニバトを目撃。
こちらの雄は残念ながら雌に嫌われているようでした。
水辺にはサギ類が多くアカガシラサギがあちこちに。
ヤツガシラと同様にアカガシラサギもまた金門島で繁殖しているようです。
敷地面積の広い公園を見て回るとクビワムクドリとヤツガシラが採餌しており、クビワムクドリは微妙な距離感。
車内からの観察であれば距離を縮められると思ったのですが、車通りの多い道路脇で採餌するハッカチョウにさえ距離を取られてしまいます。
平然と車道へ出てまで採餌する金門島の鳥たちは動く車に対しては鈍感なものの停車する車には敏感。
日本の常識が通じず首を傾げていたところ電線止まりのタカサゴモズを目にしました。
こちらの個体は尾羽が長くオオカラモズ大のサイズ。
金門島では沢山の個体を見掛けたものの、この個体だけが異常に尾羽が長かったように思います。
日本の昭和時代のような風景を眺めながら車を走らせていると信号機に執着するカラムクドリを目撃。
車を止めて眺めてみると信号の内部に営巣していることが判明。
日本では数少ない冬鳥または旅鳥として見られるカラムクドリも金門島では沢山の個体が繁殖しており、繁殖地ならではの行動を見ることができたのは海外へ足を運んだからこそ。
海外探鳥の醍醐味を感じた瞬間です。
電線にずらりと並んだのはベニバト・オウチュウ・コイカル。
日本ではいずれも珍鳥ですが金門島においては普通種。
様々な環境を見て回った結果、ハト科の鳥はベニバトが最も多く、個体数はベニバト≫カノコバト>キジバトの順。
こちらはベニバトの次に多いと感じたカノコバト。
多数点在する水辺を見て回ると必ずと言っていいほど目にしたのはコアジサシ。
大群というほどではありませんでしたが、総数としてはそれなりの数になると思います。
水面へダイブするコアジサシを横目に移動しているとヒメアマツバメが水を飲んでいました。
下手な鉄砲も数撃てば当たる。
このように目的を持たなくとも島を巡っているだけで沢山の鳥を観察できましたが、私が気になったのは軍事施設。
軍事境界線とあってか施設の間隔が異常と思えるほど狭く、迷彩柄の建物を頻繁に見かけました。
嘗て使われていた施設が一般公開されている場所もあり、こちらは金門島の最北端に位置する馬山観測所。
1992年まで中国の動向を監視するために使われていたそうですが、この日も施設には台湾軍の姿が。
地下坑道へ入ると空気はひんやり。
この時の気温は32℃だっただけに心地良い空気に気持ちは緩みましたが、坑道を進んだ先では緩んだ気持ちが一変。
使い物にならなくなった望遠鏡の先にあったのは肉眼でも見える中国のビル群。
馬山観測所から大陸までの距離は2.1kmしかなく台湾有事が勃発した場合、真っ先に狙われるのはこの金門島になるでしょう。
世界情勢が不安定なだけにいつ現実のものとなってもおかしくありません。
こちらの施設を見学して気になったのは中国福建省に最も近い小金門島。
戦争の遺構が多い島と知り、そちらへ足を運んでみることにしました。
嘗ては船でしか渡ることのできなかった小金門島に橋が架かり現在は車で行くことができるようです。
金門大橋を渡ると見えてきたのは福建省厦門市の街並み。
海沿いを進むと紅土溝三営区という軍事拠点がありました。
一般公開されているこちらの施設には中国側に銃を構える兵士の像が。
建物の上から中国を望むと手前側に台湾の国旗を掲げた獅嶼という要塞が見え、その奥には見えるのは福建省のビル群。
中国軍は1958年に金門島の奪取を図り集中砲撃を浴びせたそうです。
着弾した砲弾は44日間で47万発以上。
砲撃は70年代後半まで定期的に続いたそうですが、こうした歴史が繰り返されないことを祈るばかり…
軍事拠点を巡り気持ちが沈んだところ和みを与えてくれたのはパパイヤを突っつくハッカチョウ。
小金門島も鳥が多く水辺ではクロハラアジサシの群れを見ることができました。
小金門島を離れる前には金門大橋を記念撮影。
金門大橋を渡り金門島へ戻ると大きな干潟が見えたことからそちらの様子を見てみることに。
金門島は干満の差が激しく規模の大きい干潟があちこちで見られました。
こうした環境では沢山のシギチが見られるものと思いましたが…
双眼鏡を覗き確認できたのはチュウシャクシギ1羽、ミヤコドリ2羽、キアシシギの小群のみ。
想像とのギャップに驚きを隠しきれませんでしたが、既にシーズンは終わっていたのかもしれません。
最盛期にはどれほどの数が見られるのでしょうか。
この日はミヤコドリを撮影して探鳥を終えましたが、道中に見かけていたヒメヤマセミとアオショウビンが気になり翌日は時間を割いて探してみることに。
そちらの様子は後日更新の日記に続きます。