前回のあらすじ。
今年最初の旅行は台湾中部に位置する台中へ。
今回は三泊四日という短い日程で旅を計画しましたが、台中の観察を楽しむにあたり立ちはだかったのは現地での移動手段。
安全を最優先に考えた場合、公共の交通機関を利用することが最善の選択肢となるでしょう。
しかし時間に余裕のない私にとってその手段を取ることは現実的でなく、必然的にレンタカーという選択を迫られた今回の旅。
日程初日は台湾の激しい交通事情に冷や汗をかき、台中市街地へ辿り着いた頃には疲労困憊。
ようやく一日を終えたという安堵感だけが残りました。
2026年1月10日
得も言われぬ疲労感を残したまま迎えた日程二日目。
辺りが薄っすらと明るくなった06時30分頃、この旅の本番である大雪山国家森林遊楽区を目指しました。
台中市街地から大雪山の麓までおよそ50分。
市街地を抜けてから田舎道が続くためそれほどの緊張感はなく、ナビを必要としない一本道だったことも緊張を和らげた一因だったでしょうか。
山の麓まで走ると見えてくるのがこちらのオブジェ。
私にとって鬼門とも言えるミカドキジ。
今回の旅はミカドキジを探しに来たと言っても過言ではありません。
願掛けするようにオブジェを眺めましたが、この辺りから道幅が一気に狭くなるため注意が必要です。
自分の運転は然ることながら注意しなければいけないのは対向車と後方の車。
交互通行ができない場所であっても猛スピードで突っ込んでくる対向車。
後方からは煽り運転や無茶な追い越しをする車と気を抜くことができません。
こうした状況のなか林道17km地点に差し掛かると思わぬ出会いが。
道路脇で採餌していたのはサンケイ。
昨年は証拠写真を残しただけに留まりましたが、今回は警戒心を見せずのんびりとした様子。
観察するには願ってもないチャンスだったものの、道幅の狭い山道とあって長時間の停車は非常に危険。
早々にこの場を離れる他なく、目指したのは昨年観察を楽しんだ21km地点。
しかし現地へ着いてみると…
たわわに実っているはずの赤い実は一粒も残っておらず、バードウォッチャーの姿は誰一人として見当たりませんでした。
昨年この地を訪れたのは1月2日。
僅か8日間の違いでしたが、群がる鳥の数を考えると実のなる木を丸裸にしてもおかしくありません。
残念ではあったものの実は想定内。
昨年のように目の前で撮影会とはいかなくとも、山には同じ実をつける木が沢山あります。
気を取り直して23km地点まで進むとカメラを構える台湾人バードウォッチャーがずらり。
嬉しそうにカメラを構える様子から「珍鳥でも出ているのだろうか」と双眼鏡を覗いてみると、赤い実を頬張っていたのはスウィンホーホオジロシマリス。
ちょうど私が覗き込んだ瞬間、こちら側に顔を向けたため周囲から歓声が上がりました。
熱心にリスを撮影する台湾の方々を横目に周辺を見て回ったところバス停を発見。
昨年はこちらで観察することがなかったため気付きませんでしたが、バス停には賞鳥平台(二十三公里)と表記がありました。
※直訳すると(23km)野鳥観察展望台。
驚いたことに頂上の50km地点へ向かう路線バスがこちらのバス停に止まることが判明。
大雪山では自家用車だけでなく、公共交通機関を利用してバードウォッチングポイントへ訪れることも可能なようです。
下方でカメラを構える別グループの様子を見てみると、そちらにも赤い実のなる木がありましたが21km地点に比べると随分距離が離れていました。
試しに撮影してみたチャバラオオルリの画像がこちら。
使用機材は500mmのレンズとフルサイズのカメラ。
600mmのレンズやAPS-Cのカメラ、若しくは光学ズームのカメラであれば問題ありませんが、機材によっては厳しい距離と感じるかもしれません。
下方は今一つ賑やかさに欠けていたため再び上方へ戻ったところ、これまでの静けさが一変。
タイワンゴシキドリの飛来を皮切りに複数の種が一斉に飛来しました。
常緑の葉が生い茂るなか、色鮮やかに見えたのはベニサンショウクイ。
雄から少し遅れて雌も確認。
昨年は観察の難しかったベニサンショウクイですが、この日は出ずっぱり。
絶えず視界に入る状況が続き申し分のない観察ができたように思います。
一つ残念だったのは晴天の影響から光線の厳しい状態が続きコントラストの激しい写真になってしまったこと。
それでもザーザー降りの雨に比べたら運が良かった方でしょう。
カンムリチメドリは小さな実をつける木に群がり、忙しなく実を啄む姿が印象的。
低木の中を移動するミミジロチメドリも姿を見せ、目移りしてしまう状況に何を観察していいのやら。
タイワンシジュウカラは芋虫を咥えて飛び出し、こうした行動は昨年見られなかった場面です。
昨年の観察を振り返ってみると距離としては申し分なし。
赤い実を啄む様子は撮影会といった様子であったため何の苦労もなく観察と撮影を楽しめましたが、行動としては一辺倒でした。
今回は撮影の難しさはあったものの行動に注目した私好みの観察ができ、気が付けばあっという間に三時間が経過。
名残惜しさを感じつつも、賞鳥平台ではキバラシジュウカラの観察を最後に50km地点を目指すことに。
道中、道路脇の擁壁を歩くサンケイを目撃してすかさず撮影。
この画像を見て分かる通り、サンケイはカーブの場所に出る傾向があると思います。
日本で見られるヤマドリもまた同様の傾向があるため、山地で見られるキジ科の習性なのかもしれません。
標高が上がるにつれアリサンヒタキを目にする機会も多くなりましたが、車の往来が激しく思うような観察ができず。
開けた場所へ出ると展望用の駐車スペースがあったため、景色を眺めながら暫しの休憩を挟むことに。
この時、上空を舞っていたのはミナミツミと思しき猛禽。
当時は同定に至りませんでしたが、台湾の野鳥図鑑を参考にミナミツミと判断しました。
眼下を覗き込むと岩場に出ていたのはヤブドリ。
こちらは昨年写真を残すことができずにいたため嬉しい発見でした。
再びハンドルを握り山道をひた走ること約20分。
見えてきたのは大雪山国家森林遊楽区の料金所。
料金所で支払ったのは入園料と通行料金。
大人一人150元、自家用車で乗り入れる場合は別途100元が加算されます。
※休日は大人一人200元。
1元=5円で換算すると、おおよそ1,250円の支払いでした。
料金所を通り過ぎて間もなく、派出所脇にはキョンの姿。
昨年も全く同じ場所で目撃していたためキョンが出やすい場所なのかもしれません。
こちらから程なくして、車の乗り入れとしては最終地点となる50km地点に到着。
標高2580mという高所に位置するため、車内に置いていたパンの袋は気圧の変化で大きく膨らんでいました。
50km地点からは徒歩でミカドキジを探しましたが、その道中に出会ったのはマスコットキャラクターのようなズアカエナガ。
まるで小さなぬいぐるみが動いているかのようです。
日本でシマエナガがマスコット的な存在として定着しつつあるように、ズアカエナガも扱い方次第では同じ道を辿るかもしれません。
50km地点に着いてから二時間ほど歩き回ったでしょうか。
時間帯が悪かったのか時期が悪いのか、肝心のミカドキジは幾ら探しても見つけることができず体力的にも限界。
こうなっては運に頼る他なく、下山途中の出会いに期待してハンドルを握ると梢に止まるホシガラスを目撃しました。
ご覧頂いて分かる通り日本で見られるホシガラスとは羽色が異なります。
台湾のホシガラスについて調べたところ、和名・英名ともサイトによって表記の違いが。
台湾で見られるホシガラスは、一般にユーラシアホシガラスの亜種とされ、英名は Eurasian Nutcracker と表記されることが多いようです。
一方、和名については「ホシガラス」とする表記と、地域性を強調した呼称が混在しており、現時点では統一された表記は見られません。
その後、緊張感のある運転をしていたにも関わらず強烈な睡魔に襲われ、止むを得ず駐車スペースで仮眠を取っていると…
車外から聞こえてきたのはガサガサという枯葉を踏むような物音。
もしやミカドキジなのではと高まる緊張感。
音の出所は真正面の山肌。
注意深く山肌を見て回ると視界に飛び込んできたのは採餌中のミヤマテッケイ。
ミカドキジではありませんでしたが、ミヤマテッケイは私の眠気を吹き飛ばしてくれました。
目を凝らしてみると6羽のミヤマテッケイが連なるように採餌しており、足を巧みに使って地面を掘り返す様子はまるでツカツクリ。
仮眠を取らなければ見ることができなかった場面とあって、運の良さを感じずにいられませんでした。
約一時間に渡ってミヤマテッケイの観察を楽しみ、再びハンドルを握るとまたもやサンケイに遭遇。
雄の後を追うように雌も姿を見せ、この日は本当に運が良かったと思います。
何と遭遇するか分からない状態に安全運転をしていると後方からクラクションの嵐。
煽り運転に対して厳罰化された日本ですが、台湾ではその常識が通用しません。
麓へ降りると鳥相がガラリと変わり、オウチュウがあちこちに見られました。
山地での観察を主体に考えていたため朝方は素通りしましたが、日本では珍鳥のオウチュウも台湾では普通種。
こうした鳥をじっくり観察するのも旅の醍醐味と言えるでしょう。
台中市街地へ戻る頃にはすっかり日が暮れており、この日の夕食に考えていたのは鼎泰豊。
混雑を承知で鼎泰豊を訪れるも、案の定二時間待ち。
断念せざるを得ない状況に鼎泰豊を後にしましたが、目ぼしい店はいずれも行列が出来ており夕食難民に…
私に勇気さえあれば道端に並ぶ露店で腹を満たせたはず。
しかし何処の露店からも中華系スパイス独特の香りが漂い、得体の知れない露店に飛び込む勇気がありませんでした。
本当であればこうした露店で食べてこそ台湾グルメの真髄を味わえると思うのですが…
あちこち歩き回った結果、行きついたのはバーガーキング。
安心して食べられるはずのバーガーキングも中華圏独特の味付けをしているのか、ほのかに八角が香ったような。
もはや私の嗅覚・味覚がおかしくなっていたのかもしれません…
日程三日目もミカドキジを探して大雪山国家森林遊楽区へ。
そちらの様子は後日更新の日記へ続きます。