前回のあらすじ。
日程三日目も大雪山国家森林遊楽区へ足を運びましたが、50km地点での捜索は実を結ばずミカドキジの観察は幻に終わりました。
それでもサンケイやキンバネホイビイとの出会いは印象深く、大雪山での観察は記憶に残るものが多かったように思います。
翌日は正午過ぎに台湾を離れる予定だったため、観察を終えてからはノンストップで台北に戻りました。
2026年1月12日
日程四日目はこの旅もいよいよ最終日。
題名に台中とありますが、残り僅かな時間を有意義なものにするため台北市内での観察を計画。
お目当ては台湾の国鳥ヤマムスメ。
観察に先立ち、済ませなければならなかったのは駐車料金の精算。
精算にクレジットカードが使えないと分かり手持ちの現金を全て悠遊カードにチャージしていましたが、その額は1000元。
※日本円にして約5000円。
看板にあったのは平日費率30元/半小時・暇日費率40元/半小時という料金設定。
果たして間に合うのか…
精算機の操作は車のナンバー4桁を入力するだけと意外と簡単。
入力を済ませ表示された額は950元。
ギリギリセーフ。
間に合わなければ観察の計画を大幅に変更しなければならなかったため、ひとまず胸を撫でおろしましたが、一晩停めただけで4750円とは…
精算を済ませて車を走らせると台北市街地は朝から大渋滞。
平日の朝とあって通勤時間と重なってしまったようです。
そのため計画通りに観察地入りすることができず、探鳥に充てられる時間は僅か一時間。
待った無しの探鳥が始まりました。
手始めに観察したのはクロヒヨドリ。
これまでの観察を振り返ると高い場所にいることが多く、正直なところ良い観察はできていませんでしたが、この日は数十羽の群れが実のなる木へ集まり入れ食い状態。
あまりにも条件が良かったためヤマムスメの捜索をそっちのけにじっくりと観察。
角度を変えて観察に当たるとクロヒヨドリに混ざって採餌するズアカアオバトを発見。
画像を見ての通り頭頂に赤みを帯びていますが、実はこれに似た個体を甑島でも目にしています。
当時はズアカアオバトを疑ったものの、真相は分からないまま。
ただ、こうして台湾で再び似た色合いを見たことで、あの日の記憶がふと蘇りました。
甑島での観察を思い出しているとクロヒヨドリが一斉に離散。
猛禽でも現れたのかと思いきや、顔を覗かせたのはタイワンリス。
次から次へと観察対象が増えるなか何を観察すべきか迷っていたところヤマムスメの群れが頭上を通過。
探す手間が省けたことを喜び群れの後を追いましたが、ここで思わぬものを目にしました。
倉庫前に集まっていたヤマムスメのうち、一羽が倉庫入り口へ侵入し鍋に顔を突っ込む姿を目撃。
食べ物を漁っているように思え、その動向に注目していると…
肉片のような物体を取り出したヤマムスメ。
まるで順番待ちでもするかのようにその様子を伺う他の個体。
間もなくヤマムスメの群れは次々に食べ物を咥え林の奥へと姿を消しましたが、気になったのは鍋の中身。
何を持ち去ったのかと鍋を覗いてみたところ、入っていたのは鶏肉と思われる塊。
この時、鍋の横に貼り紙があることに気付き思わず苦笑いしてしまいました。
貼り紙に書かれていたのは…
・大量の冷凍鶏肉を入れるな
・ちゃんと保存できず腐ってしまった、電気代の無駄だ
・非常に困っている
どうやらここは共同で使われている冷蔵庫なのか、書き殴った文章から住民の苛立ちが滲んで見えます。
おそらく鍋に入っていたのは廃棄せざるを得なかった鶏肉だったのでしょう。
ヤマムスメの姿が見えなくなるとルリチョウも鍋に顔を突っ込む様子が見られ、付近に生息する鳥たちはこの場所に食べ物があることを学習しているようでした。
想定する観察とは懸け離れていたもののこの日の目的は達成することができ、時刻を確認すると8時50分。
レンタカーの返却を10時30分に予定していたため、渋滞を考慮すると残された時間は10分ほど。
残り僅かな時間をクロヒヨドリの観察に充てようと元居た場所へ戻りましたが、植栽を出入りする雌雄のシキチョウを目撃。
ここで気になったのは雌の個体。
腹部まで灰褐色を帯びており、これまでに見てきた個体とは特徴が異なります。
もしかすると単なる汚れの可能性もありますが、個体差の範疇と考える方が自然でしょうか。
こちらのシキチョウを観察して時間切れとなり、帰り支度を整えるため車へ戻ろうとしたその時、悠々と空を舞う大型猛禽が視界に入りました。
この場所では度々オオカンムリワシを目にしていたため今回もオオカンムリワシかと思いましたが、よく見てみると翼の形状が異なります。
双眼鏡を覗き分かった正体はカザノワシ。
最後の最後に大物が出ました。
初列風切の反り返りが大きく、顔つきはイヌワシを見ているかのよう。
全く想定外の出会いだっただけに喜びを隠しきれませんでした。
カザノワシは上昇気流に乗って高度を稼ぐと山陰に隠れる頃には豆粒ほどの大きさに。
このように短い時間ながらも内容の濃い観察ができた最終日。
残る仕事はレンタカーの返却でしたが、最後の運転が一番心臓に悪かったかもしれません。
給油を済ませて店舗へ戻ると一気に疲れが押し寄せ、疲労困憊の状態でした。
それほど緊張感のある道のりだったと思います。
空港へ到着してからはラウンジでしばしの休憩。
今回の旅を振り返ってみると、実質二日間の観察にも関わらず想定以上の成果をあげることができました。
運に味方された場面も少なくありませんでしたが、昨年の経験が活かされた結果だったと思います。
ただ一つ心残りなのはミカドキジ。
帰国してからも頭からミカドキジが離れず、いつの日か阿里山を目指して再びハンドルを握る日がくるかもしれません。
2026年 野鳥観察の旅 in 台中 (1月) はこれにておしまい。