前回のあらすじ。
日程三日目はパシル・リス・パークでの探鳥から始まり、多くの野鳥を観察した後は昼食と観光を兼ねてリトルインディアへ。
異国情緒あふれる街並み以上に私の心を掴んだのはカヤトースト。
ココナッツミルクとパンダンリーフが香るジャムは日本で見かけません。
旅の思い出を持ち帰ろうとお土産にカヤジャムを選び、次に足を延ばしたのはマリーナベイサンズ。
夜は隣接するガーデンズ・バイ・ザ・ベイで光のショーを楽しみ、観察に観光と今回の旅は順調そのものでした。
2026年2月14日
日程四日目。
最終日となったこの日は午後から激しい雷雨になるとの予報が。
予想通りだったとしても一日に一度は雨が降ると覚悟していただけに、これまでよく持ちこたえてくれたと思います。
観察に先立ち外の様子を見てみると、賑やかな鳴き声を聞かせていたメグロヒヨドリたちが一斉に離散。
次の瞬間、降ってくるように現れたのはカンムリオオタカ。
メグロヒヨドリはカンムリオオタカの飛来を察知して逃げたのでしょう。
目の前に現れたとあって遠慮なしにカメラを構えましたが、何故かピントが合いません。
もしやと思いレンズを覗くと結露によって真っ白。
南国あるあるの現象に、この時はスマホで記録を残しました。
何度飛んでも同じ場所へ戻ってくるカンムリオオタカを観察した後はシンガポール植物園へ。
最終日の探鳥地に選んだシンガポール植物園は1859年開園の歴史を持ち、面積は約82ヘクタール。
都市の中心部にありながら熱帯雨林を抱える広大な緑地です。
実際に足を踏み入れた感想は、もはやジャングル。
整備されているとは言え、鬱蒼とした環境では観察が難しいように思いました。
そのため開けた環境を探して園内を進むと聞こえてきたのは甲高い鳴き声。
上方から聞こえる鳴き声を頼りに周辺の木々を見上げたところ、螺旋状に動くシマベニアオゲラを発見。
ジュロンで観察したズアカミユビゲラもそうでしたが、派手な見た目ながらも意外に目立ちません。
高所のシマベニアオゲラを観察していると足元から『ガサガサ』という音が聞こえ、間もなく顔を覗かせたのはドブネズミ。
このドブネズミに意識を取られたことが失敗のもとでした。
いつの間にかシマベニアオゲラの姿は無くなっており、どの方向へ飛んだのか見当もつかず。
残念でしたがシマベニアオゲラを諦めて探鳥を再開すると、園内にはセキショクヤケイやコアオバトが沢山。
上空にはブッポウソウやハチクマなど日本の夏鳥が飛び交い、水辺では蓮の上を歩くシロハラクイナも見られました。
目移りする状況に何を観察するべきか迷っていた時の出来事。
大きな葉が不自然に揺れており、覗き込むとシンガポールの国鳥であるキゴシタイヨウチョウの姿が。
驚いたのはその行動。
葉っぱに溜まった水を利用して水浴びをしており、雌もまた同様に水浴びをしていました。
水浴びを終えたキゴシタイヨウチョウが羽繕いを始めると、周囲を動いていたのはアカメヒヨドリ。
探鳥を始めた当初は観察が難しいように思いましたが、環境が変わることにより鳥相に変化が見られたのは良かった点。
茂った場所を好むムナフムシクイチメドリが見られたのも植物園だからこそ。
こちらは動きが速く双眼鏡で追うこともままなりませんでしたが、画像に残すことができたのは運が良かったと思います。
この時、樹上からけたたましい鳴き声が聞こえ正体を探っているとカザリオウチュウを発見。
複数箇所から鳴き声が聞こえるものの、姿の見えない状況に苛立ちを覚え、半ば諦めの気持ちが出始めた頃…
私が目にしたのはキュウカンチョウ。
けたたましい鳴き声を発していたのは嘗て一世を風靡した、あの九官鳥でした。
ものまねをする鳥としてペットショップで目にした方も多いのではないでしょうか。
私が幼き頃、面白がって話しかけたことを懐かしく思います。
現在はワシントン条約の規制対象となりペットショップから姿を消しましたが、まさか野生の九官鳥を目にするとは思いもしませんでした。
枝葉の奥を動く様子を観察していると複数の個体が追いかけ合うように飛ぶ場面が多くなり、開けた場所からその様子を観察してみることに。
頭上を掠めるように飛び交うキュウカンチョウを眺めていると、悠々と空を舞っていたのはウオクイワシ。
和名から想像するにミサゴのような生態を持つと考えられますが、この時は生態に迫るような場面は見ることができず。
それでも開けた場所に立っているだけで沢山の出会いに恵まれ、シンガポール植物園が如何に良い環境であるか感じ取ることができました。
その後も定点で観察を続けると、キュウカンチョウを追いかける謎の鳥を目撃。
謎の鳥は姿を見せる機会が少なく、印象に残るのは赤い尾羽のみ。
正体が気になり、周辺の様子に気を配っていると驚きの結果が。
なんと、キュウカンチョウを追いかけていたのはヨウム。
シンガポールでもヨウムが見られるのかと驚きを隠せませんでしたが、冷静に考えるとアフリカ原産のヨウムが生息しているはずもありません。
調べたところ、シンガポール植物園には数年前より籠脱けの個体が複数羽定着するようになり、地元では知られた存在なのだとか。
謎が解けてスッキリしましたが、その後も定点観察を続けるとルリノドハチクイが飛来。
見晴らしの良い場所とあって、同じ木にはブッポウソウが止まることも。
フライングキャッチで次々に昆虫を捕まえるルリノドハチクイでしたが、その様子を撮影しているといつの間にかアオショウビンが目の前に。
音も立てず現れ、いつ飛来したのかも分かりません。
人の多い場所で暮らしているためか、犬を連れた方が真下を歩いても動じることはなく非常にのんびりとした様子。
モデルのように振る舞うアオショウビンを撮影していると時刻は正午を過ぎており、一旦観察に区切りをつけて園内のレストランへ。
観光客で賑わうレストランでしたが運良く待たされずに済み、数あるメニューのなかから選んだのはチリクラブパスタ。
シンガポールグルメと言えばチリクラブを思い浮かべる方も多いことでしょう。
これまで食べるチャンスがなかっただけにずっと気になっていましたが、味は良い意味で想像通り。
カニの風味を殺さない程度の辛さがアクセントとなり、パスタとの相性も抜群でした。
心配していた雷雨もなく青空が広がっていたことから、食後も園内を散策してみることに。
花畑では蜜を吸うキバラタイヨウチョウが見られ、その様子を観察しているとチャノドコバシタイヨウチョウが飛来。
太陽に照らされる雄のチャノドコバシタイヨウチョウは美しく、ハチドリを想像するのは私だけでしょうか。
気温が上昇したためか午後は鳥の出が悪くなり、木陰で休むソデグロバトの群れを観察してシンガポール植物園での探鳥は14時30分を以て終了としました。
この後は一旦ホテルへ戻り荷物の整理。
真夏のシンガポールから真冬の秋田へ帰るため、装いを変えなければいけません。
身支度を整えていると、この旅もいよいよ終わりだと感じましたが、実はこの後に別の楽しみが。
最終日は観察も然ることながら、楽しみにしていたのが世界一と称される空港の散策とラウンジの利用です。
渡航前の下調べでは空港内に人工の滝が流れているとのことでしたが、この情報には誤りがあり滝が流れるのは「JEWEL」という施設。
看板に従って連絡通路を進むと、ドーム型の建物が姿を現しました。
建物の中はさぞかし涼しいだろうと想像していましたが、JEWELは温泉を思わせる蒸し風呂状態。
帰国に合わせて冬の装いだったため吹き出す汗が止まりません。
間もなく目にしたのは、映画のような世界観。
これが建物の中なのかと思うほど自然と人工が融合しており、ジャングルに居るような気分にさせられました。
一つのテーマパークとして楽しめるという評判通り、この滝は一見の価値があると思います。
滝が流れる直ぐ傍をディズニーの絵柄が入った電車が走り、アトラクションのように思えるのは私だけではないでしょう。
滝をありとあらゆる角度から眺めた後はショッピングエリアへ。
沢山の飲食店が並ぶなか、カヤトーストのお店を見つけ小腹を満たすことに。
JEWELは見所が多く思いのほか歩き回りましたが、これもまた旅の良い思い出になりました。
チェックインは出発時間の3時間前から。
※ANAの場合。
出国手続きも入国の時と同様に超簡単。
手荷物の検査が無いことに違和感を覚えつつも寄り道することなくラウンジへ。
今回は第2ターミナルからの出国であったため、利用できるラウンジは5箇所。
私は SilverKris Lounge を利用することに。
内部は落ち着いた空間で、オーダー式の食事やバイキングなどお酒も充実していました。
この日は機内泊となるため何よりも先にシャワールームへ入りましたが、ホテルよりも設備が整っていたことに驚き。
汗を流した後は食事とお酒を楽しみながらこの旅の振り返り。
私の探鳥力が及ばず観察種こそ伸びなかったものの、今回の旅ではシンガポールを満喫できたように思います。
三泊四日の旅で歩いた距離は60km超。
これまでの旅を振り返ってもこれほどの距離を歩いた経験はありません。
この旅もいよいよ終わりとラウンジを後して間もなく、目にしたのは搭乗口間際に設置された手荷物検査場。
「こんな所に」と意表を突かれましたが、ゲートを通過すると『手荷物を見せて欲しい』と土産の入ったバッグを指差す検査官。
怪しい物が入っている訳でもなかったため言われた通りにバッグを開けると『この袋の中身は何』と尋ねられました。
袋の中に入っていたのはカヤジャム。
素直にジャムが入っていることを伝えると『これはダメだ』の一点張り。
何故だと尋ねると『100ml以上の液体物は持ち込めない』と言うのです。
無論、それは知っていましたが「ジャムは液体物ではないだろう」と食い下がるも検査官も引きません。
押し問答の末、カヤジャムは没収。
瓶が割れないようにと機内へ持ち込もうとしたことが誤りでした。
まさか旅の最後にこのような結末が待ち受けているとは…
お土産を持ち帰ることができず記憶を持ち帰ることになった今回の旅。
大きなやり残しができてしまったため、いつの日かカヤジャムを取り戻しにシンガポールを再訪しようと思います。
2026年 野鳥観察の旅 in シンガポール (2月)はこれにておしまい。