前回のあらすじ。
お客様より観察帯同の依頼を受けて足を運んだ真冬の道東。
例年にない大雪、秋田と変わらない気温、未だ接岸しない流氷と今回の道東は異例尽くしといった状態でした。
流氷クルーズを楽しみにしていたお客様にとっては残念な部分もあったと思いますが、羅臼では沢山のオオワシやオジロワシを見ることができ憧れの道東を満喫されていたご様子。
日程初日の夜は予定していたシマフクロウを無事に観察することができ、二日目午前はクルーズ船に乗っての海鷲観察。
猛吹雪のなかでの観察が続き大変な思いをしましたが、それでも満面の笑みを浮かべるお客様が強く印象に残っています。
クルーズ船での観察を終えた後は海沿いを南下して野付半島へ。
2025年2月8日 (午後)
途中の漁港へ立ち寄ることなく野付半島へ着いたのは正午前。
類稀なる地形をした野付半島。
勿論お客様にとっては初めて見る風景です。
これまでにweb上では沢山の画像を見られたことと思いますが、実際に見る風景はどの様に感じられたでしょうか。
車を進めるにつれエゾシカの群れが多く見られるようになり、これもまたお客様にとって思い出の光景となったかもしれません。
この日は時間の経過と共に風が強まり立ち並ぶ電柱に止まるワシの姿は一切見られず。
強風の影響から氷結した野付湾に佇む個体がほとんどでした。
羅臼と同様に野付半島もオオワシの姿が目立ち、例年に比べるとオオワシの渡来数が多いのかもしれません。
移動している際には種不明の鳥を捕食する場面に遭遇。
野次馬的に別個体のオオワシやオジロワシが集まると獲物を抱えて海岸の方へ。
居合わせたカメラマンがこぞって撮影していました。
小休憩のためネイチャーセンターへ立ち寄ると野鳥をモチーフとしたグッズが沢山。
オオワシグッズを次々に手に取り私に見せつけるお客様でしたが「どれだけ好きなのか…」と笑わずにいられませんでした。
大量のお土産を購入した後はゆっくりと中標津方面へ。
その途中、道路脇で採餌するハギマシコを発見したものの最も天候が荒れた時間帯だったこともあり証拠写真を残すことが精一杯。
とてもではありませんが観察できる状況になく渋々野付半島を離れることに。
海岸線を離れると吹雪も落ち着き道すがら見られたのはキタキツネ。
このキタキツネ、よく見るとウンチをしていました。
中標津ではいつもの回転寿司へ立ち寄り昼食を取る予定でしたが、店へ着くと改装中の貼り紙が…
仕方なしに蕎麦屋へ寄り、かけそば・もりそば・豚丼がセットの見た目だけでお腹いっぱいになりそうな定食を注文。
北海道は何を食べても美味しいため旅行の度に肥えてしまいます。
昼食後はエゾフクロウの観察地を転々としながら鶴居村の宿泊先を目指しましたが、その道中にはタンチョウの親子を観察。
タンチョウもまたお客様にとっては初見でしたが、この後は地域柄多くの個体を見られるようになり翌日の観察に備えて良い肩慣らしとなりました。
二日目の最後にはエゾフクロウを少しだけ眺めて観察を終了。
2025年2月9日
二泊三日の旅はこの日が最終日。
あっという間に時間が過ぎたこともありお客様は三泊四日にすべきだったと名残り惜しいご様子。
憧れの道東という話もあっただけに私が想像する以上に時間の経過が早かったのかもしれません。
日程三日目はタンチョウの観察に専念しようと早朝に宿を離れ、塒立ちが見られる有名観察スポットへ繰り出しました。
現地へ着くと想像を絶する人の数。
その多くは中華圏のバードウォッチャー。
人と人の隙間から塒を覗くと思ったほどタンチョウが見られず首を傾げる事態に。
個体数が増えたことにより分散計画が進んでいるという報道を目にしていましたが、こちらを塒とするタンチョウは減ってしまったのでしょうか…
理由は定かでありませんが数少ないタンチョウがポツポツと塒を離れるようになり、その様子を撮影しようとカメラを構えたものの自由にレンズを振り回すことができずストレスMAX。
普段一人で観察することの多い私にとって人の多い環境はどうしても馴染むことができません。
しかしお客様にとっては感動の場面だったとか。
進行方向の先に待ち構えているとあって飛翔するタンチョウは間近を飛ぶことが多く想像以上の場面だったそうです。
予報に反して穏やかな天候に恵まれたこともあり寒さに凍えるということはありませんでしたが、霧氷や気嵐といった幻想的な風景が見られなかったことは少々残念。
8時頃に観察の区切りをつけ給餌場へ移動。
9時からの給餌に備えて観察場所の確保をしなければなりません。
給餌場では既に20羽ほどのタンチョウが見られたため、お客様は最も距離の近い位置に構えてもらい私はやや離れた場所からタンチョウの飛来を待つことに。
タンチョウは何の前触れもなく飛来することから四方八方に気を配る必要があります。
定番のルートから飛んで来ることもあれば時には後方から飛来することも。
次々に飛来し給餌が始まる9時前には200羽ほどの数に膨らんでいたでしょうか。
給餌場へ降りたタンチョウは鳴き交わしをすることが多く、この瞬間を狙ってカメラを構えます。
例年通りの冷え込みであれば鳴き交わしの際にタンチョウの吐息を撮影できますが、この日は気温が高くそういったシーンを撮影することはできませんでした。
午前9時、給餌が始まるとタンチョウのボルテージは一気にヒートアップ。
美味しそうなご馳走を前に気分が高揚する人間と同じ感覚なのでしょうか。
詳しく分かりませんが給餌の開始と共にタンチョウは求愛のダンスを始めることが多くこの時が大きな山場。
走る・跳ねる・羽ばたくを繰り返し最も躍動的になる瞬間です。
この時ばかりは私も連写の嵐。
とは言ってもミラーレスの時代、両隣からは秒間30コマ落ちているようなシャッター音のなか私は秒間6コマのシャッター音。
流石にちょっと恥ずかしく思いましたが後の選定地獄は多少なりともマシでしょう。
お客様は間近で観察していた為か思ったよりも早い段階で満足されたとのこと。
この時、時刻を確認すると9時30分。
中標津空港までの所要時間を考慮すると少しばかり時間に余裕があり、旅の最後に公園での観察を企画し予定より早めに鶴居村を離れることにしました。
公園での探鳥は30分と短いものでしたが、お客様のお目当てはシマエナガ。
しかし場所を転々とするシマエナガの観察は運要素が強く容易に観察できるものではありません。
次々に見られる小鳥たちに興奮した様子のお客様でしたが、やはりシマエナガの観察は叶わず…
それでも短時間のうちに、キクイタダキ・シロハラゴジュウカラ・エゾコゲラ・エゾアカゲラ・ハシブトガラ・シジュウカラ・ベニマシコを観察することができ、生き物との距離が近い北海道マジックを体現できたことでしょう。
観察を終えると慌ただしく身支度を整え中標津空港へ。
これといったトラブルもなく無事に旅を終えたと思いましたが、札幌雪まつりと日程が重なった影響か千歳空港は何処も大混雑。
乗り継ぎまでにラーメンを食べようと思ったもののあまりの人混みに諦める他なく、保安検査場も大行列。
その後は遅延に次ぐ遅延、更に飛行機に搭乗してから一時間以上待たされる機材トラブルに巻き込まれ、秋田空港に到着したのは定刻より2時間遅れの19時40分でした。
今回の旅を振り返ってみると出発前から気を揉むことが多く、帰路のトラブルを見ても災難の多い旅でしたが『本当に楽しかった』というお客様の言葉を聞けたことが何より。
『三泊四日の旅にしたら良かった』という言葉もありましたが、仮にその日程であれば千歳空港大雪のニュースにあった通りとんでもないトラブルに巻き込まれていたことでしょう。
全ては結果オーライ。
お客様は今回の経験を活かし来年はご自身で道東の旅にチャレンジするそうです。
来年こそ念願の流氷が見れますように…
2025年 野鳥観察の旅 in 道東 (2月) はこれにておしまい。