前回のあらすじ。
今回足を運んだのは長崎県の福江島。
長崎港の西約100kmに位置する五島列島最大の福江島はハチクマの観察地としてご存知の方も多いでしょう。
これまで多方から福江島の様子は耳にしていましたが、渡島の経験がない私にとっては空想の世界でしかありませんでした。
ベストシーズンの渡島を考えるようになって数年が経過した今季、念願叶って福江島へ。
初めて見る規模の大きな鷹柱に嬉々としたものの、10時頃から降り出した雨は夕方まで止まず時間を持て余す一日に…
2025年9月28日
日程三日目は早くも最終日。
秋田までの乗り継を考慮すると12時55分発の便で福江島を離れなければなりませんでした。
そのため市街地までの移動やレンタカーの返却など諸々の時間を差し引いて観察に充てられる時間は10時半まで。
残された時間はほんの僅かでしたが、ラストチャンスに賭けるしかありません。
この日も夜明け前に市街地の宿を出発して観察地へ着いたのは6時前。
辺りが薄っすら明るくなった頃、展望所へ登ると前日以上に多くのバードウォッチャーが集っていました。
この日はツアー客が数を押し上げ、観察者は60名を超えていたようです。
雲の隙間から朝陽が顔を覗かせると辺りは幻想的な雰囲気に。
日の出時刻から15分が経過した頃、遥か遠くにハチクマが次々と現れ東から西へと移動する様子が見られました。
この時に撮影した画像を拡大するとフレーム内だけでも31羽のハチクマが写っています。
こうした様子に展望所付近から湧き立つ個体を今か今かと待ちましたが、前日は付近に塒を取った個体が居なかったのか目の前を舞うような個体は一向に現れず…
西へと流れていた個体に注目すると正面の山肌から湧き上がり小規模な鷹柱を作りました。
こちらへ流れてくることを期待したものの、いずれの個体も展望所から離れた位置を通過。
なかなか思い描くような光景を見ることができません。
ここで思い出したのは前日観察した際に教えて頂いた『カウント数はあてにならない』というお話。
福江島へ通い続けている方によると、集計された数は必ずしも観察に結び付くものではなく間近を飛ぶか否かは風向き次第になるそうです。
東から西へ、西から東へとU字のコースを辿ったハチクマたちは展望所後方に鷹柱を作り次々と福江島を離れていきました。
その後も遠くを飛ぶハチクマを眺めていると驚きの光景が。
展望所の真下を通過する個体が低空を乱舞。
私は見下ろす形で観察した経験が無かったため、この時はだいぶ興奮していたように思います。
真下を通過した個体も展望所後方に鷹柱を作っていたことから、上昇気流に乗る場所としては日本最後の場所となるのかもしれません。
そのように考えると去り行く姿に込み上げるものがあり、感慨深く眺めていた方も多かったのではないでしょうか。
こうした光景が続けば続くほど間近に観察したいという思いが強くなり、展望所を下りるべきか悩む時間が続きました。
しかし移動するほど裏目に出るというのはよくある話。
元居た場所へ戻った時『こっちに居たら良かったのに』なんてことを言われかねません。
真下を乱舞するハチクマは途絶えることがなく、その姿に葛藤すること数十分。
移動を決断。
展望所を下りて見晴らしの良い場所を探すと何処を見ても立木に視界を遮られ私の取った行動は見事裏目に出てしまいました。
右往左往しても埒が明かず展望所へ戻ろうと思った矢先、稜線の陰からハチクマが続出。
咄嗟にこの様子を撮影しましたが、大きく撮れているだけで福江島らしさや当時の状況が何も伝わりません。
そもそもタカの渡りは撮影するものではなく眺めるもの。
私は当時の状況を振り返るため写真に残していますが、本来あるべき姿は眺めるものだと考えています。
勿論、観察や撮影のスタイルは人其々。
私の考えを押し付けるつもりはありませんが、撮影するのであれば肉眼の見た目に近付けることにより思い出のあるものになるでしょう。
こうした考えからこの時はスマホでの撮影が適当であると判断。
動画を撮影する傍ら東側の山肌に見えたのは幾つもの鷹柱。
何処を見たらよいのか迷うほどでした。
最も規模の大きな群れが流れると私の方へ一直線。
私の頭上へ到達した際にはカメラからスマホに持ち替えて撮影しましたが、ハチクマは小さくとも風景を取り込めたこちらの写真の方が個人的に好みです。
200羽ほどのハチクマが乱舞を始めると居合わせた観光客から歓声が上がり大変驚いた様子。
私も圧巻の光景に息を飲みましたが、鳥に興味の無い方にとっては何が起こっているのか不思議に思われたかもしれません。
この時、歓声と共に聞こえてきたのは大きな雷鳴。
いつの間にか北側の空は真っ暗になっており観察地へ積乱雲が近付きつつあるようでした。
依然として遠くの山肌には鷹柱が見えたものの、ポツポツと雨が降りはじめ止むを得ず観察を終えることに。
雷鳴が立て続けに響くなか帰り支度を始めると本降りの雨へ変わり、市街地へ向かう頃にはバケツをひっくり返したような豪雨になりました。
前日、ミーハー気分で教会巡りをした罰が当たったのかもしれません。
この短い旅行を振り返ってみると雨に祟られながらも、充分過ぎるほどの観察ができたと思います。
現地では30年以上前に福江島の渡りを突き止めたという方より貴重なお話を聞かせてもらうこともでき、良い思い出を沢山持ち帰ることができました。
去り行くハチクマの姿を思い出しながら空港へ戻ると豪雨から一転、青空の見えるお天気に。
神も仏もないとはこのことでしょうか。
青空をこれほど恨めしく思ったことはありませんでしたが、私が福江島を離れる頃には快晴の空に変わっていました…
2025年 野鳥観察の旅 in 福江島 (9月) はこれにておしまい。